http://www.kobe-np.co.jp/rensai/200607gid/04.html
4 .医 師 (2006/08/04)
「苦しみ」受け止め診断
「性同一性」
この難しい言葉は、精神医学界の用語「ジェンダー・アイデンティティー」の和訳で、「心の性」や「性自認」と同じ意味で使われる。
十年前にはなじみが薄かったが、今では性別適合手術も実施され、一定の条件下で戸籍の性別変更を認める法律もできた。
とはいえ、児童が性同一性障害と診断されるケースは極めてまれだ。
「そんな低年齢で男や女と意識するわけがない」「親の意向に沿った言動を取っているだけではないか」
優(ゆう)(7つ)=仮名=が女児として通学していることを報じたとき、数々の疑問が寄せられたように、子どもの「心の性」は、理解されにくい現状にある。
◇ ◇
医師三人に意見を求めた。
「親の養育法が原因ということは、外国の研究などでほぼ否定されている」
日本初の(公認)性別適合手術を実施した埼玉医科大学で、山内俊雄学長が語った。日本精神神経学会「性同一性障害に関する特別委員会」の委員長として、診断と治療のガイドライン策定にあたった人物だ。
受精後間もなく胎児が受ける性ホルモンによって、脳の性差が決定されるとする説が最も有力といい、「男性脳と女性脳で違う所が確認され、性同一性障害に関係すると思われる部位も分かってきた」。山内学長は、性差が生まれながらに存在すると説く。
一方、「遺伝疾患のようにすっきりと仕組みが分かっているものではない」とするのは、GID(性同一性障害)学会理事を務める東京都の針間克己医師。
子どもの性同一性障害の場合、「本人から詳しく話を聞くとともに、親と話している間の行動にも着目する」という。遊び、服、持ち物の色…。国際的な診断基準に従いながら、発達障害などが混じっていないかも見極める。
針間医師は「性別違和感だけでなく、それによって苦しんでいるかどうかも重要」と強調した。
性同一性障害の治療で、長く西日本の拠点だった岡山大学医学部。中塚幹也教授は「ホルモン治療に入る前の確定診断は慎重にするべき」と話す。
どの小学校にも数人はいる「少し女(男)の子っぽい男(女)の子」のうち、性同一性障害と考えられるのは一、二割だといい、「性別の違和感というのは非常に広い概念だ」と解説した。
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性同一性障害には、まだ判然としない面がある上、子どもの場合、身体の性に戻る可能性もある。
しかし「診断が固定化できないからといって、対応を先延ばしする理由にはならない」と山内学長。「医師は、患者の苦痛を受け止め、軽減することに努めるものだ」