性同一性障害 まずは共感を 当事者組織『gid.jp北陸』設立1年

中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/article/ishikawa/toku/genba/CK2009051002000189.html
性同一性障害 まずは共感を 当事者組織『gid.jp北陸』設立1年
2009年5月10日

 心と体の性が一致せず苦しむ「性同一性障害」を抱える人でつくる「gid.jp」北陸支局が、設立から間もなく一年を迎える。支局長の斉藤顕一(あきひと)さん(32)=富山県=は活動や自身の治療経験から北陸地方の現状や課題を指摘する。(報道・谷岡聖史)

医療充実や社会の理解課題
斉藤支局長に聞く
 斉藤さんは「女」として生まれたが、物心ついた時から心の中は「男」。女性として生きることに強い違和感を覚えながら育った。約十年前、映画で性同一性障害を知り、「自分は間違いなくこれだ」と確信した。

 最初にぶつかった壁は医療機関の少なさだ。富山県内では「診たことがなく分からない」と軒並み断られ、何とか金沢市で二軒のクリニックを見つけた。

 また、「北陸は都会に比べると近所付き合いが多い。『世間体』の問題も大きい」という。同じ悩みを抱える人の中には告白できず、うつ病になる人も少なくない。斉藤さんの場合は職場の協力を得られた。それでも打ち明ける時は、退社覚悟だった。

 斉藤さんはホルモン療法や性別適合手術で治療を進め、戸籍上の性別や氏名も変更。現在は身体的、法的、社会的にも「男」として暮らしている。

 「みんな性同一性障害になりたくて生まれたわけじゃない。趣味の問題でもない。本気で悩み、勇気を持って治療に踏み切った人に、まずは共感してほしい」と訴える。

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 gid.jp北陸支局は昨年六月、関西、東海に次ぐ全国で三番目の地方組織として設立した。四回の交流会で当事者や家族らの輪が広がった。今年六月にも一周年記念の会合を開くほか、八月には北陸地方の医療事情を考えるフォーラムの開催を計画している。

 「一人で悩まないで」と斉藤さん。問い合わせは、電子メール=info-hokuriku@gid.jp=へ。

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 性同一性障害は、身体的な性と心の性(性自認)が一致しない状態をいう。原因は成育環境やストレスではなく、先天性との見方が有力になっている。

 発症率は三万−十万人に一人ともいわれるが、悩みを打ち明けられない人が多く、実際はそれを上回るとみられる。二〇〇七年の調査では、国内では少なくとも約七千人が精神科などを受診した。

 〇四年、性同一性障害者特例法が施行した。現在は「医師の診断書がある」「未成年の子がいない」などの条件を満たせば、戸籍上の性別を変更できる。