「トランスジェンダー・フェミニズム」

トランスジェンダーフェミニズム」を読む。

トランスジェンダー・フェミニズム

トランスジェンダー・フェミニズム

著者は鋭い論考でいつもうならせてくれる田中玲さま。
どうでもいいけど、大阪で電車に乗ってたら、田中玲さまが隣に座ってて、びっくりしたことがある。


そんな田中さまの、待望の1冊。
これまであちこちに書いたものや、書き下ろしたものの、論文集。


トランスジェンダーフェミニズム」といかにもすごい概念で、性別の問題に新たな視座を与える。
詳しい内容は、下の目次とか、このURL(http://selfishprotein.net/lesart/jap/2006/060309a.shtml)を見ていただくとして。
個人的に一番かっこいいな、と思ったのは、あとがきの最後の文章。


P155
トランスジェンダーフェミニズム。私はトランスしているフェミニストの一人として今、ここにいる。私はFTM(female to male)に見えるため、「男の特権を手に入れたかった人」と解釈されるかも知れない。しかし、私はもしも自分が下半身の手術をするとしても、戸籍上の性別変更をするつもりは全くない。私はずっと「性別」という強固なものの境界線上に立ち続ける。そして、トランスジェンダーが自らの境界線上の視点から、フェミニズムにもたらすものがあると信じている。


うーむ、かっこよすぎる。
かっこよすぎるのも癪なので、瑣末な突っ込み。
P89>異句同音

異口同音。改訂増刷のときは校正を。


P106>正規ルートに乗っていなければ、いわゆる「特例法」による戸籍上の性別が変えられないという噂はあるが、


はい、噂に過ぎず、事実は変えられます。


あとP106に、
>しかし、精神治療はそれを無視し、当事者たちの「認めてもらう」ための、ジェンダーステレオタイプにはまった過剰なアピールをそのまま受け取っている。


つまり、ミニスカートとかはいてるほうが、精神科医から「本物の女」と認められやすい、みたいな事が書いてあるけど、本当かなあ。
なんか、これこそステレオタイプな古いネタという気もするけれど。
個人的には、あんまりミニスカートとかはいてると、「?」とか思って、かえって診断に躊躇するし。
あるいは、逆に「裁判所には、ミニスカじゃなくて、パンツスーツぐらいの方がいいですよ」といいさえしているのだが・・・。


あと全体的に「正規医療」vs「闇医療」という、二項対立的な、考え方も気になった。
ガイドライン第二版以降、あるいは特例法においては、そういう二項対立的な考え方、あまりしてないと思うのだが。
ちょっとこの辺も、古いネタに基づく観念的議論というか・・・。


などと文句いいつつ、鋭い1冊であることは間違いない。
値段も1600円と、そんなに高くない。
というわけで、ぜひ読んでみたい1冊である。


以下目次と関係URL 。

目次 ::

第1章◎なぜトランスジェンダーフェミニズム

 「女」というカテゴリー
 なぜトランスジェンダーフェミニズム
 女である、ということ
http://selfishprotein.net/lesart/jap/2004/041204a.shtml
 フェミニズムとの新たな共闘へ

第2章◎トランスジェンダーという選択

 トランスジェンダーという選択
   ―FTM(女性体から男性体へ)のライフスタイル
 トランスジェンダーとしてのカムアウト
http://selfishprotein.net/lesart/jap/2004/040918a.shtml
 ポリガミーという生き方
http://selfishprotein.net/lesart/jap/2004/041005a.shtml
 パートナーの親に会いに、アメリカに行く

第3章◎「性同一性障害」を超えて、性別二元制を問い直す
          ―『トランスジェンダリズム宣言』

 「性同一性障害」を超えて、性別二元制を問い直す
http://www.harikatsu.com/nikka2/calen.cgi?mode=view&YMD=20030826&w=2
 性同一性障害者の性別取扱いの特例に関する法律をめぐって
 典型的なFTMトランスセクシュアルの個人史
    ―虎井まさ衛『女から男になったワタシ』
 正規ルートの診療とは
http://selfishprotein.net/lesart/jap/2004/041012a.shtml
第4章◎多様な性を生きる

 すべての言葉を貫く「私」という通底音
   ―掛札悠子『「レズビアン」である、ということ』
 炸裂する過激な愛 ―パット・カリフィア『パブリック・セックス』
 あなたが本当にジェンダーから自由になりたいのなら
   ―パトリック・カリフィア『セックス・チェンジズ』
 パートナーシップとは何か
   ―『同性パートナー 同性婚・DP法を知るために』
 多様な性を生きる人たちとDV
http://www.harikatsu.com/nikka2/calen.cgi?mode=view&YMD=20031116&w=0
 セクシュアリティを考える拠点に
   ―クィアと女性のための新たな共闘の場の提案


 あとがき
 初出一覧
 用語解説+おすすめWEB