- 作者: 田中玲
- 出版社/メーカー: インパクト出版会
- 発売日: 2006/02/01
- メディア: 単行本
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著者は鋭い論考でいつもうならせてくれる田中玲さま。
どうでもいいけど、大阪で電車に乗ってたら、田中玲さまが隣に座ってて、びっくりしたことがある。
そんな田中さまの、待望の1冊。
これまであちこちに書いたものや、書き下ろしたものの、論文集。
「トランスジェンダー・フェミニズム」といかにもすごい概念で、性別の問題に新たな視座を与える。
詳しい内容は、下の目次とか、このURL(http://selfishprotein.net/lesart/jap/2006/060309a.shtml)を見ていただくとして。
個人的に一番かっこいいな、と思ったのは、あとがきの最後の文章。
P155
>トランスジェンダーとフェミニズム。私はトランスしているフェミニストの一人として今、ここにいる。私はFTM(female to male)に見えるため、「男の特権を手に入れたかった人」と解釈されるかも知れない。しかし、私はもしも自分が下半身の手術をするとしても、戸籍上の性別変更をするつもりは全くない。私はずっと「性別」という強固なものの境界線上に立ち続ける。そして、トランスジェンダーが自らの境界線上の視点から、フェミニズムにもたらすものがあると信じている。
うーむ、かっこよすぎる。
かっこよすぎるのも癪なので、瑣末な突っ込み。
P89>異句同音
異口同音。改訂増刷のときは校正を。
P106>正規ルートに乗っていなければ、いわゆる「特例法」による戸籍上の性別が変えられないという噂はあるが、
はい、噂に過ぎず、事実は変えられます。
あとP106に、
>しかし、精神治療はそれを無視し、当事者たちの「認めてもらう」ための、ジェンダーステレオタイプにはまった過剰なアピールをそのまま受け取っている。
つまり、ミニスカートとかはいてるほうが、精神科医から「本物の女」と認められやすい、みたいな事が書いてあるけど、本当かなあ。
なんか、これこそステレオタイプな古いネタという気もするけれど。
個人的には、あんまりミニスカートとかはいてると、「?」とか思って、かえって診断に躊躇するし。
あるいは、逆に「裁判所には、ミニスカじゃなくて、パンツスーツぐらいの方がいいですよ」といいさえしているのだが・・・。
あと全体的に「正規医療」vs「闇医療」という、二項対立的な、考え方も気になった。
ガイドライン第二版以降、あるいは特例法においては、そういう二項対立的な考え方、あまりしてないと思うのだが。
ちょっとこの辺も、古いネタに基づく観念的議論というか・・・。
などと文句いいつつ、鋭い1冊であることは間違いない。
値段も1600円と、そんなに高くない。
というわけで、ぜひ読んでみたい1冊である。
以下目次と関係URL 。
- 目次 ::
「女」というカテゴリー
なぜトランスジェンダー・フェミニズムか
女である、ということ
http://selfishprotein.net/lesart/jap/2004/041204a.shtml
フェミニズムとの新たな共闘へ
第2章◎トランスジェンダーという選択
トランスジェンダーという選択
―FTM(女性体から男性体へ)のライフスタイル
トランスジェンダーとしてのカムアウト
http://selfishprotein.net/lesart/jap/2004/040918a.shtml
ポリガミーという生き方
http://selfishprotein.net/lesart/jap/2004/041005a.shtml
パートナーの親に会いに、アメリカに行く
第3章◎「性同一性障害」を超えて、性別二元制を問い直す
―『トランスジェンダリズム宣言』
「性同一性障害」を超えて、性別二元制を問い直す
http://www.harikatsu.com/nikka2/calen.cgi?mode=view&YMD=20030826&w=2
性同一性障害者の性別取扱いの特例に関する法律をめぐって
典型的なFTMトランスセクシュアルの個人史
―虎井まさ衛『女から男になったワタシ』
正規ルートの診療とは
http://selfishprotein.net/lesart/jap/2004/041012a.shtml
第4章◎多様な性を生きる
すべての言葉を貫く「私」という通底音
―掛札悠子『「レズビアン」である、ということ』
炸裂する過激な愛 ―パット・カリフィア『パブリック・セックス』
あなたが本当にジェンダーから自由になりたいのなら
―パトリック・カリフィア『セックス・チェンジズ』
パートナーシップとは何か
―『同性パートナー 同性婚・DP法を知るために』
多様な性を生きる人たちとDV
http://www.harikatsu.com/nikka2/calen.cgi?mode=view&YMD=20031116&w=0
セクシュアリティを考える拠点に
―クィアと女性のための新たな共闘の場の提案
あとがき
初出一覧
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