書評 南野知恵子監修 【解説】性同一性障害者性別取扱特例法

黒田重利


精神医学47巻5号2005年5月580p
http://www.igaku-shoin.co.jp/prd/00135/0013580.html


(前半部分略)
>2003年1、2月頃、外来で「自民党議員の間で性同一性障害の勉強会が開かれ(正確には再開され)、うまくいけば、この夏までに法律が成立するかもしれない、そのためには私たちも一生懸命に運動する」と聞いた。その1年半前に6人が性別変更を求めて裁判所に申請したが、却下された。そのような状況であり、「そうですね」と言いながら、内心はとても法律制定は無理だろうと思っていた。その一方で、その頃新聞、テレビで大きく取り上げられ、世の中はそういう方向に流れているのだとも感じた。上川あやさんの都議選当選の影響も大きかった。そして7月に法律は制定され、2004年7月に施行され、性別変更ができた人はかなりの数になっていると思われる。岡山大学付属病院でもかなり人々が変更できた。しかし、この法律では性同一性障害者の人すべてが、戸籍の性別を変更できるものではない。とくに「子が居ない」は問題であるという指摘は多い。
 法律が施行され、その法律の解説書が著されたことは時宜を得ている。当事者、家族そして法律、医療などの関連分野の方々に一読をお勧めする。また、これまで性同一性障害の診療経験の乏しかった精神科医も今後は性別変更の診断書の作成を求められることがあると予想される。そういうときにこの本は大いに役立つと思う。

解説 性同一性障害者性別取扱特例法

解説 性同一性障害者性別取扱特例法