ソカリデス親子

学会で話したネタです。

 

1974年、同性愛そのものは精神疾患ではなくなり、脱病理化されました。

一方で、同性愛を精神疾患と強く主張する、精神科医も当時は多くいたのです。

代表的な人物が、精神分析家でもあった、チャールズ・ソカリデスCharles W. Socaridesという人です。

彼は、同性愛は「父親の不在と、過度に溺愛する母親」に原因がある、神経症的適応として同性愛をとらえていたのです。

1922年生まれの彼は、熱心に「同性愛の治療」に取り組み、書籍もいくつも出版していたようです。       

2005年に83歳で亡くなりますが、一生、その信念を変えなかったようです。「自分は、同性愛の患者の35%を異性愛者へと治療した」とも語っています。


Dr. Charles Socarides (Gay Marriage Debate 1974)


 そんなチャールズ・ソカリデスには、リチャード・ソカリデスRichard Socaridesという息子がいました。

彼は青年時代になると、ゲイであることを父親にカミングアウトします。さらに、その後、ゲイの人権運動に邁進し、クリントン政権では大統領補佐官となり、米国全体のLGBTの人権問題に取り組むことになったのです。
この二人の親子関係は?

チャールズ・ソカリデスへのインタビュー動画があったので見てみました。


Coming Out to My Dad, the Founder of Conversion Therapy (by Richard Socarides)



ある日父にカムアウトしたら、しばらくして、父から返事があったそうです。そこにはこんなことが書いてあったのです。

「怒ってしまって悪かった。あなたは私の人生において私にとって最も大切な人です。私はあなたを愛しています。私にとって大切なのはあなたの幸せです。そして同性愛であることがあなたを幸せにするものなら私はあなたを支えたいと思います。」
父は、生涯、仕事としては同性愛治療を続けたものの、家庭では息子の同性愛に理解があったということです。

親子関係はよかったようです。

ちょっとほっとしました。

でも、息子へ向けた愛情と同じように、クライエントのゲイの人たちに対しても、彼らの幸せを第一に考え、支えていくことに情熱を注げばもっと素晴らしかったのに、とも思います。