「散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道」拝読。
著者の綿密な取材力に感服。
栗林中将の辞世の句をめぐる話が興味深い。
時世の句は
国の為重きつとめを果たし得で 矢弾尽き果て 散るぞ悲しき
この「悲しき」には様々な思いが込められていた。
しかし、大本営はそれを「散るぞ口惜し」と改ざんし発表。
栗林の様々な思いは世に伝わらぬことになる。
精魂を込め戦ひし人未だ地下に眠りて島は悲しき
悲しきという言葉を使うことで、天皇は栗林の絶唱を受け止めたのである。
自分の意見をあまり言えない皇族にとり、歌を詠むという行為に込められる思いというのは相当に深いものがあると、あらためて思った。
- 作者: 梯久美子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/07/29
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