性同一性障害:理解を 男性に戸籍変更・桜井さん、函館で18日講演会 /北海道

性同一性障害:理解を 男性に戸籍変更・桜井さん、函館で18日講演会 /北海道

 ◇「セーラー服、泣いて拒んだ」
 心と身体の性別が食い違う「性同一性障害」への理解を深めてもらおうと、09年に女性から男性に戸籍を変更した、函館市の会社員、桜井健さん(26)らが18日に函館市で講演会を開く。性同一性障害者への偏見や差別があり、公表できずに悩む人も多い。桜井さんは「表に出せずに苦しんでいる人たちがいることを知ってほしい」と呼び掛けている。
 「男なのに明日からセーラー服で学校に行けと言われたらどうしますか?」。桜井さんが自分の性別に「違和感」を覚えたのは小学校に入学する時だった。赤いランドセルに戸惑った。中学に入学すると、目の前にセーラー服が用意され、泣いて拒んだ。
 徐々に体が女性らしさを増してくるにつれ、違和感も増した。入浴の時も、できるだけ体を見ないように急いで体を洗った。中学生のころ初恋も経験したが、相手は同じクラスの女性だった。「女が女に告白などできるわけがない」。一生、恋愛も結婚もできないと覚悟したという。「女性」として高校、大学と進み、就職したが、服装は「男性」だった。
 就職後、同僚の女性に障害を告白し、08年11月に札幌医大で「性同一性障害」との診断を受けた。その後、戸籍を変え、「彩」から「健」に改名。その女性と付き合い始め、今は同居している。09年8月からは男性ホルモンを投与する治療を開始。今後は性別適合手術も予定しているが、医療保険適用外のため、治療費は約200万円に上る。
 日本精神神経学会が08年に診断を公表している全国9カ所の医療機関で調査したところ、国内の性同一性障害者は約7200人、うち道内は約300人。しかし、実際の障害者数は国内に約1万人以上とみられる。
 支援団体「WITH US性同一性障害」(札幌市)によると、性同一性障害者は就職が難しくなったり、身内の冠婚葬祭に呼ばれないなどの差別があるという。団体メンバーの一人でもある桜井さんは「性同一性障害者は身の回りに当たり前のように暮らしている。障害者の現状を変えたい」と話している。
 講演会は18日午後6時半からサン・リフレ函館で。ドラマ「3年B組 金八先生」で性同一性障害の生徒を演じた上戸彩さんのモデルとなった虎井まさ衛さん(46)が講演する。質疑応答もある。参加費は1人500円。問い合わせは実行委員会の日野由美さん(090・8630・0791)へ。【佐藤心哉】
………………………………………………………………………………………………………
 ■ことば
 ◇性同一性障害
 心と体の性別が一致せず、違和感を感じて苦しむ疾患。原因は不明。一定の条件を満たした成人に戸籍上の性別変更を認める特例法が04年に施行。09年までに約1700人が認められている。性同一性障害の子どもが制服やトイレに悩み、不登校や自殺未遂に至るなどの問題も指摘されている。

[毎日新聞社 2010年6月10日(木)]