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質問なるほドリ:性同一性障害のホルモン療法って?=回答・丹野恒一
<NEWS NAVIGATOR>
◆性同一性障害のホルモン療法って?
◇体の性、薬で心に近づける 慎重さが必要、経済負担も課題
なるほドリ 性同一性障害(GID)を公表する人が増えたね。通院する人もいるようだけど、どんな治療をするのかな。
記者 GID医療には大きく分けて精神科的ケアと身体的な治療があります。身体的な分野でも、内科的なホルモン療法と、外科的な手術があります。
Q ホルモン療法って?
A GIDの人たちは身体的な性別と、こうありたいと思う性別が違うことに強い苦痛を感じています。そこで性ホルモン剤を投与し、体の特徴を心の性に近づけるのです。
Q 薬で性別を変えることなんてできるの?
A 変えられる部分と変えられない部分があります。例えば女性が男性ホルモン剤を使うと、筋肉量が増えて体毛が濃くなり、声は低くなります。反対に男性が女性ホルモン剤を使うと、体脂肪が増えて乳房も膨らみますが、声は変わらず、ひげは毛が細くなるぐらいと言われています。
Q 危険性はないの?
A 性ホルモンを補充する治療は他の疾患でも行われていますが、GIDの治療では、元々の性のホルモンを抑えつつ正反対の性別に近づけるため、投与する量が多く、人によっては精神的に不安定になることがあります。体への負担にも注意が必要です。特に体が男性である人に女性ホルモン剤を投与する場合、血栓症の発生率が一般の人の20倍に高まるという、オランダでの研究結果もあります。逆に女性から男性化していく場合は、動脈硬化などの危険性が指摘されています。
Q 慎重に治療しないといけないんだね。
A 男性ホルモン剤はほとんどが注射による投与なので医療機関の受診が必要ですが、女性ホルモン剤には飲み薬や張り薬もあるため、インターネットなどで個人輸入することが可能になっています。ネットの世界は匿名性が高いので、医師の診断結果が出ていない子どもでも買うことができてしまい、とても危険な状況です。
Q どんな病院に行けばいいのかな。
A まずは精神科の専門医を受診し、ホルモン治療が必要ということになれば泌尿器科や婦人科で受けられます。ただし自費診療のため経済的負担が重く、保険適用を望む声が高まっています。当事者の人たちがもっと暮らしやすくなるよう、さまざまな支援の充実が急がれます。(生活報道部)
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毎日新聞 2010年6月13日 東京朝刊