加藤周一の自伝の続編。
パリ留学のことが中心。
続は、さらにかっこよく、美しい。
思春期はもてないおたくキャラだったのが、いつのまにかモテモテのインテリキャラに変わり。
シュバイツアーにすら、その偽善ぶりを批判する、鋭さ。
さすがとしかいいようがない。
しかし。
帰国後、炭鉱会社の経営者側の嘱託医となり。
福岡の炭鉱を視察。
そこで労働者側の意見も聴き、経営者側との意見と比較し、加藤氏は労働者側の意見が正しいと本書の中では論じている。
だが、本を読む限り、その後、経営者側に労働者の環境改善のために実際かけあったとの行動は見られない。(現代の産業医であれば当然すべきこと)
また、思い返せば、「羊の歌」でも、戦後、原爆被害の調査団として、広島に米軍医師とともに乗り込み調査をするのだが。
原爆被害の悲惨さに思索を巡らしているが、その後、被爆者への治療に取り組んだようでもない。
すなわち、加藤氏は、本人も言うように、常に傍観者的態度であり、目の前にいる患者の治療に泥臭く取り組む姿勢が不十分なようにも感じられる。
真善美を追求するあまり、治療を行わない医師よりも、
偽善であっても、治療を行う医師のほうがプラクティカルだと思う。
加藤氏は医師をやめて正解だったのだろう。
加藤周一を尊敬するのは卒業しようかな、と思った。
- 作者: 加藤周一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1968/09/20
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