投与増 効果変わらず

朝日新聞岡山
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投与増 効果変わらず
2009年04月16日

■「性同一性障害」女性のホルモン療法/岡大院、141人分析


 心と体の性が一致しない「性同一性障害」の女性に男性ホルモンを投与する場合、月経停止などの男性化が現れる割合は、半年の期間でみると投与量や投与回数に影響されない可能性があることが、岡山大大学院医歯薬学総合研究科泌尿器病態学の大石智子医師らの研究でわかった。16日から岡山市で開かれる日本泌尿器科学会総会で発表される。(上田真美)


 同大学病院は性同一性障害の診療として、女性患者に対して、男性ホルモン「テストステロン」を投与する療法を実施している。投与量は患者と相談しながら、2週か3週ごとに125ミリグラム、あるいは250ミリグラムを注射する。患者は早期の効果を求めて多くの投与量や回数を望む例が多いという。


 大石医師らのチームは、00年9月から08年10月までに同大学病院で新規にテストステロンの投与を始めた患者のうち、6カ月目まで追跡できた患者141人を調査。2週ごとに250ミリグラム(30人)、3週ごとに250ミリグラム(50人)、2週ごとに125ミリグラム(58人)の3グループについて、月経停止や声が低音化した時期と、投与量や期間との関係を分析した。


 その結果、投与開始から3カ月目、6カ月目までに月経が停止した割合を比較すると、3グループの間に統計的に意味のある差はなかった。また、声の低声化についても3カ月目では差がみられたが、6カ月目には大差なかった=表。


 一方、06年に同じチームが患者のデータを分析した際には、2週ごとに250ミリグラムを投与しているグループは、副作用が現れて投与量を減らす例が他のグループよりも多くみられたという。副作用にはにきび、体重増、血液中の赤血球が増える多血症などがあり、特に多血症は血液が流れにくくなるため、血管への影響が出るおそれもある。


 分析結果から大石医師は「早く男性化するために投与量を増やす必要は、必ずしもない」と指摘。「患者は生涯にわたってテストステロンを投与し続けるので、投与量の違いによる将来の血液疾患のリスクを詳細に調べていく必要がある」と話している。


■学会で発表へ


 日本泌尿器科学会総会は19日まで開かれ、同日午後3時15分からは市民公開講座「さわやかシニアの泌尿器科的アンチエージング」(同学会総会、朝日新聞社アステラス製薬共催)が同市北区表町1丁目の岡山シンフォニーホールである。講師は名古屋第一赤十字病院加藤久美子・女性泌尿器科部長、川崎医科大泌尿器科学教室の永井敦教授ら。入場無料。問い合わせは運営事務局(0120・010・383)へ。