<高1放火調書引用>医師宅などを秘密漏示で捜索 奈良地検

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<高1放火調書引用>医師宅などを秘密漏示で捜索 奈良地検
9月14日11時52分配信 毎日新聞


 奈良県田原本町の医師(48)宅で昨年6月、母子3人が死亡した放火事件を題材にした著書に、殺人などの非行事実で中等少年院送致の処分を受けた当時高校1年の長男(17)の供述調書が引用されていた問題で、奈良地検は14日、長男の精神鑑定にかかわった京都市内の医師の自宅や勤務先を刑法の秘密漏示容疑で強制捜査し、医師を取り調べた。同容疑による強制捜査は異例で、少年法と、言論や出版の自由を巡る論議を改めて巻き起こしそうだ。
 著書は、フリージャーナリスト、草薙厚子さんの「僕はパパを殺すことに決めた」(講談社)。草薙さんは、法務省東京少年鑑別所法務教官や地方局アナウンサー、通信社テレビ部門のニュースデスクなどを経てフリーになり、テレビ番組のコメンテーターなども務めている。同地検はこの日、東京都港区の草薙さん宅も捜索し、事情を聴いた。
 著書では「供述調書を含む捜査資料約3000枚」を集めたなどとし、供述調書を引用して、非公開の少年審判のやり取り、精神鑑定の内容を記述している。
 調べなどでは、医師は、昨年秋に奈良家裁であった非公開の少年審判で長男の精神鑑定を実施し、少年の供述調書などを外部に渡した疑いが持たれている。京都市内の病院で神経精神科副部長を務め、特に小児期青年期精神医学、司法精神医学が専門。裁判所技官で大津家裁医務室の非常勤医師でもある。
 少年の関係者によると、少年と父親の医師は今年6月、草薙さんらを刑法の秘密漏示容疑で奈良地検刑事告訴した。関係者は、流出させた人物は不詳としたうえで「草薙さんの著書は、長男を広汎性発達障害と診断した精神鑑定書の提出後に開かれた少年審判について詳細な記述がないことから、鑑定医から供述調書の写しなどを入手した可能性が強い」とみている。
 著書の表紙には長男が自宅への放火を実行に移すまでを記した本人直筆のカレンダーを掲載しており、父親は「長男の将来が不安だ」と憤っているという。【阿部亮介、高瀬浩平】
 【ことば】刑法の秘密漏示罪  刑法では、医師や弁護士などが、正当な理由がないのに業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役または10万円以下の罰金に処すると規定している。