戸籍変更者の実際 考察

テレビを見ていて、川島なお美がセレブなのはわかったが、亀田が世界チャンピョンベルト、というのはよくわからなかった。
亀田兄弟といえば、やっぱ亀田総合病院だと思うが。
そんなことより、きのうの続きの貼り付け。


>考察
まず最高裁判所による速報値を考察する。却下4例は、新聞報道や筆者の経験からは、子どもを有するものが却下を承知で問題提起の意味で申立したケースなどと思われる。取下12例は、申立人や診断書を作成した医師が、必要な書類や要件を理解しないまま、申立てたものの、書類や要件の不備を指摘され、取下げたものと思われる。
また日本では約1年半の間に326名の性別変更が許可されているが、英国、ドイツのデータと比較する。英国では2005年にgender recognition actが試行され、1年間で896名が性別変更を許可された。ドイツでは1981年から1990年の10年間の間に733件の申立があった(10.9%が却下)。比較を容易にするため、1年間における人口1000万あたりの許可数を計算し記す。日本:17名、英国:152名、ドイツ:8名。日本、ドイツと比較し、英国の性別変更数が多いのは、日本とドイツが性別適合手術を変更の要件に含むのに対し、英国では性別適合手術を要件として含んでいないためと思われる。
次に筆者の臨床統計の結果について考察する。
年齢平均は、FTMMTFで差はなかった。精神科初診時の年齢は、FTMMTFより若い傾向にあることが知られている。戸籍変更者では年齢差が出なかったことは、FTMは精神科受診から実際に手術にいたるまでにMTFより長い期間を要することが理由として考えられる。
日本精神神経学会の作成した性同一性障害の治療のガイドラインでは、性別適合手術の実施に当たっては、手術前に2名の精神科医による診断、精神的サポートと新しい生活スタイルの検討、意見書の作成が求められている。一方、特例法においては、戸籍変更においては医師2名による診断は必要とされるが、必ずしも手術前の診断を要求するものではない。そのためMTFにおいては、精神科受診歴がないまま手術を受け、術後に戸籍変更のために初めて、精神科医の診断を求めてくるものもいた。また、精神科医を受診していても、精神科医が時期尚早あるいは手術が不適当と判断する場合にも、自己判断で手術を受けていたケースもあった。
性別適合手術を受ける医療機関はさまざまである。FTMでは半数近い7名が国内のジェンダークリニックで手術を受けているが、MTFでは、国内のジェンダークリニックで手術を受けたものは2名と少なく、21名はタイのいくつかの医療機関で手術を受けていた。タイの医療機関で手術を受けるものが多い理由として、性別適合手術の経験が豊富で治療技術への信頼があること、費用が日本と比べて安価なこと、手術までの待ち期間が日本と比べて短期間ですむこと、などが考えられる。
FTMにおける性別適合手術の内容はさまざまであるが、子宮卵巣摘出術のみでの許可例も7名であった。これは卵巣摘出により、「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」の要件を満たし、ホルモン療法で陰核が矮小陰茎様の外観を呈することにより、「その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること」を満たすと判断されることによると思われる。


おわりに
筆者自身が作成した診断書により性別変更が許可された性同一性障害者たちの臨床的特徴を法律要件に関わる部分を中心に記した。本論文の示したとおり、特例法の運用に当たっては、ガイドラインに不一致な治療経過や海外で手術をうけたものなども、特に問題なく性別変更は許可されている。このことが、ガイドラインや治療システムの形骸化をもたらすことがないように、わが国におけるいっそうの性同一性障害治療の発展を望みたい。