杉山文野さん(24) 自らの性同一性障害を本につづったフェンシングの元日本代表

2006.6.2.朝日新聞 ひと

杉山文野さん(24)

自らの性同一性障害を本につづったフェンシングの元日本代表


体は女なのに心は男。そんな性同一性障害GID)との診断を半年の通院の末、5月に受けた。「風呂とトイレは男女のどっちに入ればいいのかな」と改めて思った。
 物心ついた頃から女の子扱いに抵抗があった。立ち小便をしてズボンを汚し、好きな女の子にはどきどきした。首都圏の小中高一貫の女子校でセーラー服を着た。女体の着ぐるみの上に、女装する感覚だった。生理が始まり、心と体の不一致が大きくなる。自己嫌悪と周囲にばれないかという恐怖感の中で過ごした。
 フェンシングが救いにもなった。中学でジュニア女子の日本代表に。04年にはナショナルチームに入った。今は子どもたちを指導する。
 性別を聞かれれば、「真ん中」と答える。人との付き合いの幅が広がるうちに、自分は「男+女」だと思えるようになった。性別の前に自分を磨こう。そうなるまでの半生を「ダブルハッピネス」(講談社)につづった。日常の不便や周囲への告白。ガールフレンドとの性行為での満足感と、それでも残るもやもやにも触れた。
 GIDに悩む人は全国で数千人という。カミングアウトして当選した議員の存在や、テーマに取り上げたテレビドラマ「金八先生」の影響で認知は進んだが、偏見は依然残る。「僕らは少数派だけど、間違っているわけじゃない。受け入れられない人たちや社会に障害はないんですか」