筋肉増強ステロイド使用者は、拒食症の人と同じに、ゆがんだボディーイメージを持っている。


American Journal of Psychiatry 163:697-703, April 2006の「Body Image and Attitudes Toward Male Roles in Anabolic-Androgenic Steroid Users」(筋肉増強ステロイド使用者のボディーイメージと男性役割への態度)という論文が興味深い。
http://ajp.psychiatryonline.org/cgi/content/full/163/4/697


まず、基本概念として、「reverse anorexia nervosa」(反拒食症)あるいは「muscle dysmorphia」(筋肉醜形恐怖)という概念があるらしい。
http://psy.psychiatryonline.org/cgi/reprint/38/6/548?ijkey=47a74e6bf82776ef36e133cc957c0280db35b835
その特徴として。


1.実際には筋肉がついていても、自分の体が貧弱だと感じる。
2.トレーニング時間のために社会的職業的活動を犠牲にする。
3.人前で自分の裸をさらすのを避ける。


というのがある。
で、筋肉増強ステロイド使用者の中には、この「反拒食症」が18.2%、
使用しないで、ウェイトトレーニングする人は0%だった、
という先行研究がある。


この論文は、対象として。
93人のウェイトトレーニング者。
そのうちの48名が、筋肉増強ステロイド使用者。
45名が使用していない。
45名のうち、4名の同性愛者は除外。(使用者の中には同性愛者はなし。)
この2群を比較。


結果として。
・筋肉増強ステロイド使用者は「Eating Disorders Inventory」(摂食障害尺度)が高得点。
つまり、摂食障害者と似たキャラ。
・ 「Male Role Attitudes Scale」(男性役割態度尺度)が高得点。
つまり、世間的な男性になろうと必死。
・ 「常に体を服で隠す」が高得点。


要するにまとめると、筋肉増強ステロイド使用者は、その特徴として、
・ 「男らしくありたい」と思うと同時に、
・ 拒食症の人が、いくらやせても自分は太っていると、ゆがんだボディーイメージを持ってると同様に、いくらムキムキになっても、自分の体は貧弱だ、とゆがんだボディイメージを持っている。


ということ。


感想。
私自分も、「自分の体は貧弱なので、筋肉をつけないと」と常日頃、思っているが、ちょっと筋肉がつけば、すきあれば自分の裸体を、学会であろうがなんであろうが、人に見せたいと思ってるので、「筋肉醜形恐怖」の診断基準は満たさないと思った。