幼少期の精神的暴力、自傷行為の危険9倍 鹿児島大調査


今日の朝日新聞にこんな記事。


http://www.asahi.com/national/update/0122/TKY200601210360.html
>幼少期の精神的暴力、自傷行為の危険9倍 鹿児島大調査
2006年01月22日15時44分
 子どものころに家族から精神的暴力を受けた経験のある人は、そうでない人に比べ、リストカットなどの自傷行為に走るリスクが約9倍になることが、鹿児島大心身医療科チームの調査でわかった。家庭の崩壊や学校で無視された経験なども、リスクを高めていた。こうした疫学調査は、少ない。22日に東京都内で開かれる日本心療内科学会総会で発表される。
 九州の5大学に通う1〜2年生1626人を対象に調査票を配布し、1592人(男性831人、女性761人)から回答を得た。リストカットや壁に頭をぶつけるなど、自傷行為の経験者は120人(7.5%)に上った。
 「家族からの放任や罵倒(ばとう)などを経験した」と答えた人が自傷行為するリスクは、そうでない人の8.7倍だった。同様に「第三者からの性的暴力を受けた」が5.8倍、「教師や友人からの無視を経験した」が5.5倍、「両親からかわいがられた経験がない」が4.2倍だった。
 自傷行為は専門家の治療が必要だが、小中高生では学校の養護教諭が相談に乗る場合が多い。調査を担当した増田彰則講師は「リスクが分かっても自傷行為を防ぐことは難しいが、対応の参考にして欲しい」という。
 この問題に詳しい臨床心理士長谷川博一東海女子大教授は「疫学的調査は少なく意義がある。ただ、男子はたばこの火を押しつける、女子はリストカットが多いなど自傷行為のパターンは異なる上、いくつかの理由が複合して起こるため、こうした観点からの分析も必要だ」という。


引用以上。
正直言って、「なんだかなあー」というところ。
発表聞いたわけでないので、判断材料はもっぱら記事からだが。
この研究が、示したのは、「自傷行為の経験者では、『家族からの放任や罵倒(ばとう)などを経験した』などと答えた人が多かった。」ということ。


このことは、因果関係として、「幼少期の精神的暴力」が原因で、「自傷行為」が結果であることを示すのではない。


つまり、因果関係が逆の可能性もある。
すなわち「自傷行為をしている人」(原因)は、過去をネガティブに捉え、「幼少期に精神的暴力を受けたと答える」(結果)の可能性もある。


あるいは幼少期から、通常は暴力と感じないようなことも、非常に繊細に暴力として感じた、という可能性もある。


調査対象は大学生であり、客観的に見れば、自分の力で大学に進学したものを除けば、親のおかげで、大学に行ってるわけだから、「両親からかわいがられた経験がない」とはなかなか言いにくいと思う。
進学させてもらった分、十分可愛がってもらっているわけで。
にもかかわらず、そう答えるとしたら、かなり認知がネガティブでは。


いずれにせよ、きわめて主観的に答えられる質問なので、過去の客観的事実とはいいにくい。
もちろん、過去の外傷体験も、重要ではあるのだが、その人自身が、過去あるいは現在の出来事をどう主観的に捉えて答えるかという視点も共に持つべきだと思う。