性別違和の臨床において私が悩むこと 

性別違和の臨床において私が悩むこと 針間克己

こころの臨床現場からの発信ー“いま"をとらえ,精神療法の可能性を探る (精神療法 増刊第9号) 

 

P145-149

こころの臨床現場からの発信(精神療法 増刊第9号) - 株式会社金剛出版 (kongoshuppan.co.jp)

 

 

はじめに

本誌の原稿の依頼にあたっては、「書きたいことをご自由に書いてください」との趣旨であった。私自身は、「これこれ、このようなテーマで、お書きください」という具体的指示に伴う原稿を書くことはなんとかできるのだが、「ご自由に」というのは、非常に苦手である。困った困った、と思ったが、せっかくの機会なので、普段は書くことが少ない臨床場面で日々悩んでいることを書くことにする。通常の具体的原稿依頼であれば、教科書的模範解答に近い原稿を書くように努めている。ただ実際の臨床場面では、教科書的模範解答では収まらないさまざまな難しい問題がある。周りに相談する仲間も乏しい開業医としては、一人で悩み続けて、答えが出ないままとなっている。悩みの多くがそうであるように、問題点が自分の中で明確に整理されていないので、文章化するにあたっても、あまり明晰に書けない恐れもある。ただ、そういう混沌とした思考の中にも、原石のように、今後の臨床において有用なヒントやテーマが隠されているのではないかと思う。思いつくままに原稿を書いていくので、読み苦しくなるかもしれないがご容赦いただきたい。

 

以下本文部分略

 

性別違和の臨床

共感、受容と診断

中立的態度と身体治療適応の条件

性同一性障害者特例法の手術要件

病理化と脱病理化

他の精神疾患と治療の適応

成人年齢の引き下げ

 

 

おわりに

本稿は、性別違和の臨床において筆者が悩んでいることを記した。個人的悩みであっても、性別違和診療の構造的問題やあるいは、精神科診療全体にもかかわる普遍的問題も隠されているかと思い、書かせていただいた。まとまりのない文章となってしまったが、何かのヒントになれば幸いである。