特集:きょうから新聞週間 毎日新聞のキャンペーン報道(その2止)

http://mainichi.jp/select/wadai/news/20101009ddm041040112000c.html
>◆「境界を生きる」性別に苦しむ人たち

 ◇少しずつ広がる理解
 僕は男。私は女。生まれた時からどちらかに決まっている−−そう疑わない社会で、誰にも言えない苦しみを抱え込んでいる子どもたちがいる。その声を届けようと昨年9月から、連載「境界を生きる」(第10回早稲田ジャーナリズム大賞受賞)を続けている。

 染色体やホルモンの異常で男女の判別が難しい性分化疾患や、心と体の性別が一致しない性同一性障害への無理解は根強い。自傷を繰り返したり不登校になった子たちが、勇気をふり絞って取材に応じた思いをどこまで伝えられるのか。悩み、手探りする中での取材だ。

 見えてきたのは、彼らが思うように生きることを阻む壁だった。不十分な医療体制、学校の配慮ない対応……。100通近い反響には、我が子を自死で失った母からのメールもあった。訪ねると「同じような子たちが少しでも生きやすい世の中になってほしい。その役に立てるなら」と、言葉を詰まらせながら語った。

 少しずつ変化もある。連載に登場した高校生が弁論大会で性同一性障害を公表した。仲間を見つけ街頭で声を上げる若者も現れた。立ち上がった勇気に、社会が理解という形で応えていく。「存在を知って」という彼らの願いをこれからも伝えたい。【丹野恒一、五味香織】

毎日新聞 2010年10月15日 東京朝刊