心の「性」認めて 中1女子「学生服着たい」 「前例ない」学校苦慮/鹿児島

心の「性」認めて 中1女子「学生服着たい」 「前例ない」学校苦慮/鹿児島

 自分の性に違和感を強く抱く鹿児島県内の中学1年女子生徒(13)が「セーラー服は苦痛」と男子学生服での登校許可を求め、学校が対応に苦慮している。生徒は性同一性障害GID)の可能性が高く、専門医の診断を受けており、体操服姿で登校している。専門家は「思春期であるだけに早急な対応が必要」と指摘する。
 生徒や保護者によると、生徒は3歳頃からスカートなど女の子らしい服装を極度に嫌がった。幼稚園児の頃から自分を「僕」と呼び、男友達とばかり遊んだ。中学入学後、生徒は別の女子生徒に恋愛感情を抱き、セーラー服を着るだけで気分が悪くなり、吐き気をもよおすようになったという。
 今年7月、生徒から悩みを告白された両親が学校に相談すると、「服装だけでなく、トイレやプールでの対応も考えなくてはならない。医師の診断書を見て判断したい」という返答だった。生徒は9月から鹿児島県外の医療機関で受診しており、診断の確定には半年ほどかかるという。
 学校側も職員会議で対応を協議。同障害を知らない教職員がほとんどで、専門家を招いて勉強会を催すことなどを決めた。しかし、学生服での登校は「他の生徒への影響が大きい」と認めなかった。このため、生徒は9月からジャージーなどの体操服で登校し、学校側も黙認している。
 文部科学省によると、性同一性障害の児童・生徒への対応指針はないという。校長は「前例がないので、どうしたらいいか困っている」と頭を抱えている。
 体操服登校を機に、生徒は同級生や地域の人たちに今の心の状態を明かした。好意的に受け止めてくれる親友も現れ、「息がしやすくなった」と明るい表情を見せるようになったという。生徒の母は「みんなに認めてもらい、堂々と胸を張って生きてほしい」と願っている。
 性同一性障害の周知に取り組むNPO法人GIDmedia」(東京)の二ノ宮悠生理事(29)は「教師が理解を示すだけで、生徒の気持ちは楽になる。『学生服が着たい』と訴えた勇気を学校は正面から受け止めてほしい」と話す。
 同障害に詳しい「はりまメンタルクリニック」(東京)の針間克己院長は「性の不一致の自覚による混乱は未成年者のほうが成人よりも大きく、周囲がストレスを緩和させる措置を速やかに講じる必要がある」と指摘した。

 〈性同一性障害GID)〉
 外形的な性別と心の性別が一致しない疾患。世界保健機関(WHO)の診断基準(ICD10)によると〈1〉異性として生き、受容されたいという願望がある〈2〉異性への性同一性が2年以上続く〈3〉他の精神障害に伴う症状ではなく、染色体異常も関連しない−−のすべてを満たすことが条件となる。国内には1万〜3万人いるとされ、原因は不明。同障害を巡っては、2005年に兵庫県の小学生男児が学校側に診断書を提出し、スカート姿などでの登校が認められた例がある。

[読売新聞社 2009年11月3日(火)]