「インターセックス」拝読。
著者の帚木蓬生は精神科医/作家らしいが。
小説としても面白く、医学的描写も詳細でその勉強ぶりに感嘆。
テーマもインターセックスへの治療観が、ジョン・マネー的早期治療派VSミルトン・ダイアモンド的な性の多様性尊重、といったもので、興味深し。
ただ、私は、細かい点が気になるほうなので…。
例えば以下のような。
P19
>確かにペニスはあったが、その下に膣口があった
>そう。たぶん卵巣と精巣の両方があるはずだ。
検査前なら、まずがCAHあたりを考えそうだが…。
P59
>ディレイター
「ダイレイター」が一般的表記。
P118
>男の気持ちも女の気持も理解できるというのは、インターセックスの人たちのひとつの長所です
なんか、ステレオタイプな言説。
P120(インターセックスの戸籍に関して)
>五つの条件をクリアすれば、戸籍の性は変更できます。
それは性同一性障害の戸籍変更であって、インターセックスの戸籍訂正はまた別の話で。
P184(ドイツの自助グループでドイツ人の発言)
>わたしは戸籍上、男性ですから、結婚することは可能です。
ドイツには戸籍はないのだが。
P232(FTMTSの治療に関して)
>声帯にシリコンを注入して声を太くする手術が残っていますが、うちではまだやっていません。
P263
>女性にしては低い声だが、男の声そのものではない。
FTMはホルモンで声は男性化するのだが…。
P234(MTFTSの治療に関して)
>できることなら身体をそっくり女性に変えてしまいたいが、彼氏たちがこのままでいいというので、踏み切れないらしかった。
まあ、確かにそういう性嗜好の男性もいるけれど・・・。
P310(インターセックスの自助グループに関して)
>日本の歴史が二千年あったとしても、これまで誰ひとりとして、当事者が大きな声を上げたことはなかった。
まあ、小説だから事実でなくても良いけど、ハッシーさんの本とかも参考文献のはずだが・・・。
P446
>男性と女性の区分を超越した人間存在。
>輝くばかりの美しい身体はそれを具現したものでした。
ちょっと神聖化しすぎでは・・・。
- 作者: 帚木蓬生
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2008/08/05
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