同性愛とトランスセクシュアルの子供は、同性愛になりやすい

「Children of homosexuals and transsexuals more apt to be homosexual.」(同性愛とトランスセクシュアルの子供は、同性愛になりやすい)
を読む。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=Abstract&list_uids=16613625&query_hl=5&itool=pubmed_docsum
うーむ。


まずはサマリーの訳。


両親の性的傾向は、子供に影響を与えるか?
3つの異なった調査に参加した、親が同性愛者で、成人に達した77名の子供のうち、少なくとも23名(30%)が、現在、同性愛だった。
レズビアンの22名の娘の中で12名(55%)、14名の息子の中で3名(21%)、が同性愛。
ゲイの17名の娘の中で5名(29%)、18名の息子の中で3名(17%)が同性愛。
ゲイとレズビアンの6人の息子の0名、が同性愛。
少なくとも25名(32%)は現在、異性愛
10名のトランスセクシュアルの子供のうち、9名の娘の中で1人が現在レズビアン、1人が現在異性愛、1人が現在トランスセクシュアル
トランスセクシュアルの息子についての報告は無し。
これらの知見は、両親の性的傾向は、子供の性的傾向にも影響を与えることを示唆する。


続いて、はじめに。
先行研究の代表は、greenの
「Sexual identity of 37 children raised by homosexual or transsexual parents.」
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?db=pubmed&cmd=Retrieve&dopt=Abstract&list_uids=655279&query_hl=3&itool=pubmed_DocSum
この研究では、女性同性愛者が親の21人の子供、MTFTSが親の7名の子供、FTMが親の9名の子供を調査。調査された子供はいずれも、典型的な性行動、異性愛指向で、親の影響なし。
それには異論もあり。


方法
親が同性愛者で既に成人に達した人々へのインタビューや、エッセイを載せた3冊の本の中身を分析。
本は、
「Families Like Mine : Children of Gay Parents Tell It Like It Is」
http://www.amazon.com/gp/product/0060527587/ref=pd_rvi_gw_1/002-0499990-3400804?%5Fencoding=UTF8&v=glance&n=283155
「Sons Talk About Their Gay Fathers: Life Curves」
http://www.amazon.com/gp/product/1560231793/sr=8-1/qid=1151392751/ref=sr_1_1/002-0499990-3400804?ie=UTF8
「Out of the Ordinary : Essays on Growing Up with Gay, Lesbian, and Transgender Parents」
http://www.amazon.com/gp/product/0312244894/qid=1151392889/sr=1-1/ref=sr_1_1/002-0499990-3400804?s=books&v=glance&n=283155
1冊目の著者の父はゲイ、3冊目の著者の父はトランスジェンダー
いずれの本もLGBTを養護する立場。
また、本の中に出てくる親達は、養子縁組した人ではなく、結婚して子供ができた後に、離婚して同性愛者として生きている人が主たるパターン。


結果。
サマリー通り。
本の中に記載が無く、セクシュアリティが不明の子供も多くいる。


考察。
ゲイ・レズビアンの養子縁組の権利擁護の立場から、「子供のセクシュアリティに与える影響はない」と言う言説があるが、このデータはそれに否定的。
影響を与える要因として。
1. 親からのプレッシャー。
Golombokの研究によれば。
レズビアンの娘の56%、息子の14%が、「母親は自分に同性愛者になって欲しい」と感じている。
レズビアンの娘の25%、息子の57%が、「母親は自分に異性愛者になって欲しい」と感じている。
2. ゲイカルチャーにどっぷり漬かってる。
あるレズビアンの娘は異性愛に反発している。というのも「ゲイカルチャーにどっぷり漬かっているので、健康な異性愛関係というのがわからなのです」
「ゲイの音楽や本ばかりに囲まれていたので、自分のセクシュアリティを考える前に、隠語を覚えてしまいました」


文献紹介以上。
以下AJの個人的考察。

1. この論文は、「子供も同性愛になるから、ゲイ・レズビアンには養子(あるいは人工生殖)を認めるな」的政治キャンペーン臭の強い物のようだ。
これに対し、「このデータはおかしい」と反論するのが一般的なようだが、「子供が同性愛になってどこが悪い」と反論しても良いと思うが。
そういう反論もあるんだろうけど。


2. そういう政治的話は抜きにしても、このデータは、信頼できない。
対象が、ゲイ、レズビアン擁護派によるインタビュー集なので、それに答える子供達も、ゲイ・レズビアンが多いのは当然と思われる。
大人になって、ゲイ・レズビアンコミュニティと縁がなくなったストレートの人が、わざわざインタビューに答えることは少ないと思う。


3. とはいえ、レズビアンの娘にレズビアンが断トツに多いのは興味深い。だが、影響するのは純然たるレズビアンと言うより、男性恐怖とか、男性嫌悪とかで、その結果としての2次的なレズビアンという気もしないでもない。


4. とここまで書いて、著者のpaul cameronで検索かけたら、
http://psychology.ucdavis.edu/rainbow/html/facts_cameron.html
とか
http://en.wikipedia.org/wiki/Paul_Cameron
とか。
想像以上に著者は、トンデモ学者のようだ。
そんな著者の論文を無邪気にBlogで紹介すべきでなかったか・・・。
まあ、今後Paul Cameronの名を見かけたら、要注意と言うことで。