トムをジェーンに。6

トランスセクシュアルの中ですら、全ての人が、ニコルを女児として育てた方がいいと思ってるわけではない。あるトランスジェンダー自助グループの会合で、ローレンは、ローレンがニコルを女児として育てることは子どもにとって有害だ、という意見の大人のFTMに会った。


ローレンは語った。「彼は私にこう語った。『今日、自分が男性であるのは、子どもの頃苦しんだからだ。』彼は基本的には私が子度を受容していることに反対だった。彼の考えでは、このことで苦しむことも必要だと。」


また、ある匿名希望の性別違和のある大人も疑問を呈した。


彼はいう。「何事であれ、決定的な判断をあわててすべきではない。これは後戻りができるたぐいのものではない。ホルモンを始めたりやめることは可能だ。しかし必ず副作用が伴う。全ての学校制度を一晩で変えることはできない。そんな幼い年齢で、はっきりしたことはわからない。」


ニコルには、彼女の少女的外観を損ねる思春期が始まるまでの数年間は、医学的介入の必要はないであろう。しかし、いずれは、男性化を予防するホルモンブロッカー、さらには女性化ホルモンの投与を検討することになる。あるいは、気持ちが変わり、女性から男性への性別移行をするかもしれない。いずれにせよ、そういった変化が起こると、いじめの対象となる可能性がある。


ローレンが言うには、ニコルの学校で既に噂になってるという。「先生の中には、集まって私たちの噂話をしている人もいる。先生の中には、私は本当は娘が欲しかったそうだ、という人もいる」と彼女は語る。


しかし、いじめの可能性があるからといって、決意は変わらないとローレンは語る。「子どもの魂を奪い、壊したくはない。学校側に選択の余地はない。学校がだめだというなら、それはわが子の権利を侵害したことになる。だめといわれも、学校を変えたり、自宅学習したりはしない。だめだと言い返します。」


「われわれが親です。われわれが決めるべきです。」と父親のトムは言い加える。「子どもはとても幸せです。皆を愛し、皆から愛されてます。親の気合で突き進むのみです。」


設備的にも、ニコルが学校に女児として通うのは難しくないと、両親は考える。ほとんどの教室に個室のトイレがある。教師の協力さえあれば、他の子どもは何も知らないままだろう。


Marilyn Volkeというマイアミの性科学者が言うには、フロリダの学校では、トランスセクシュアルの子どもが、先生の思慮深い助けを借りながら、うまくやってるという。「担任教師だけが知っている場合もあります。」


「この子は、すばらしく理解のある両親に恵まれた子どもです。この両親には医学的、メンタル的専門かも味方にいます」 とレズビアンの権利を擁護する弁護士のKaren Doering は言う。「いじめさえなんとかなれば、この子はうまくやっていけると思う」と彼女は言う。


学校当局は、両親からニコルについての要請を受理したことは認めていないが、GIDの子どもを扱うマニュアルはあると主張する。


当局広報のAndrew Feirsteinは語る。「われわれは、一人一人の子どもを個人として扱います。子どもが入学するに当たり、特別な対応を必要とする場合には、評価に必要な十分な情報を集めます。地区の専門家も同席し、両親と共に、最善の教育プランを作成します。」


両親が言うには、1月に園長と連絡を取り、ニコルへの特別な対応の必要を説明した、心理専門職からの2通の手紙を送付した。


それ以来両親は待っている。幼稚園入学の手続きが秋に始まるにもかかわらず、両親は学校側の計画がわからず、どのように入園手続きの書類を記載するかに困っている。「私は、男性、女性いずれともかかないつもりです。インターセックスを意味する『I』と書くつもりです」とローレンは語る。