「神谷美恵子日記」


反響が意外にあったので、神谷美恵子本あと2冊。

神谷美恵子の生きがいの育て方」。
本人が書いたものではない。
神谷美恵子を、キュリー夫人マザーテレサ、ヘレンケラー、ナイチンゲールなどと比較しながら、いかに偉人であるかを述べている。


神谷美恵子日記 (角川文庫)

神谷美恵子日記 (角川文庫)

神谷美恵子日記」。
タイトルどおり、本人の日記の抜粋集。
2箇所引用する。


P31>私もマリー・キュリーの何分の一でもいいから勉強しよう!やせて卒倒する位までやろう!


P49>気焔をあげたあとはいつも淋しくなる。えらそうな事言っても、自分は普通の女の子でしかないのです、と誰にともなく言ってかんべんして貰いたくなる。私はナイチンゲールやジャンヌ=ダルクではない。出来ることならこの使命感から解き放たれて、平凡な静かな、女としての生涯を送りたいと思う。私は昔から家にいることが好きで、弟妹たちの世話したり、台所をしたり、縫物したりする生活が好きだった。そしてそうした世からかくれた女の生活の尊さを誰よりもよく知っている。
 しかし−しかし−自分の生涯は自分のものではない、自分で好きな様にする訳にはいかぬ。みんなお委ねしよう。


ということで、日記を読むと、
「自分はキュリー夫人ナイチンゲールのような立派な女性にならないといけない」
「自分は神の委ねにより、らい病者に奉仕しなければいけない」

という使命感が良く伝わってくる。
またその後、その思いを行動化し、「生きがいについて」などの書籍を記すことで、使命感は達成され、後世の人間から、偉人として扱われることになったのである。


すなわち、神谷美恵子氏のidentityは、「長島愛生園でハンセン病者に奉仕する」ことに大きく依存していたことが分かる。


逆に言えば、もし長島愛生園が必要でなくなり、なくなるようなことがあれば、神谷美恵子氏にとっては、identityの危機であっただろう。