多様な性に優しい職場へ 外資系、社内支援広がる

朝日.2012.11.27
http://www.asahi.com/job/news/TKY201211270460.html
多様な性に優しい職場へ 外資系、社内支援広がる
【山本奈朱香】ゲイやレズビアンなどLGBTの人たちにとって働きやすい環境を作ろうという取り組みが、外資系企業を中心に広がっている。社内組織を作ったり、個別に就職説明会を開いたりするところもある。

 15日、外資系証券大手のゴールドマン・サックス(東京都港区)には、約30人の学生が集まった。「LGBTネットワーク・オープン・デー」と名付けられた会社説明会だ。

 会の始めにスピーチをしたのは、中継画面でつながれた米国本社のオフィスに座る女性役員。女性パートナーとの間に2人の息子がいるという彼女は、学生たちに呼びかけた。「必ずしもカミングアウトする必要は無い。でも、選択肢のある就職先を選ぶべきです」

 同社が国内でLGBT向けの説明会を始めたのは2009年。中心となるのは「LGBTネットワーク」という社内組織だ。サポーターと呼ばれるストレートの人も含め、約50人が参加している。

 共同代表の男性(36)によると、一般的に、LGBTの人の中には、結婚しない理由をしつこく聞かれたり、「未婚では昇進できない」といった会社の風潮に悩んだりして退社する人も多い。自身も働きやすさを考えて外資系企業を選んだ。「このようなネットワークがあるだけで安心して働ける」

 日本IBMも08年、LGBT向けの「カウンシル」という組織を立ち上げた。「実力を発揮するため、阻害要因を取り除こう」という趣旨。カウンシル内から出た意見は規約の見直しなどに反映される。最近は、結婚祝い金制度が同性間の事実婚の社員にも適用されるようになったという。

 企業の枠を超えてつながろうという動きもある。大手広告会社に勤める松中権さん(36)は10年、NPO「グッド・エイジング・エールズ」を仲間と立ち上げた。異業種交流会やワークショップを開くほか、3年前からは学生向けの就職セミナーを開催する。

 社内でもカミングアウトして「気が楽になった」という松中さんは「家族や友人など大切な人にうそをつくのは悲しい。個人の選択だが、カミングアウトしやすい社会を作っていきたい」と話す。

 セミナーに参加した都内の国立大大学院に通う男子学生(22)は「差別が無くなるには20〜30年かかると思うけど、企業での取り組みが進むのはうれしい」。ただ、まだ当面は、「会社に入ったら人間関係でうそをつかないといけない」と不安を抱えているという。

 一方、社会的・身体的な性が人格と一致しない性同一性障害の人にとって、問題は更に深刻だ。

 「日本性同一性障害と共に生きる人々の会」が10月に開いた就職に関する交流会では「性を変えたいと相談したら退職に追い込まれた」「社内のトイレが(性別の問題で)使えない」などの問題が話し合われた。

 山本蘭代表は「就職で同じスタートラインにも立てない。能力でその人を見てほしい」と訴える。