人生案内 30代息子が同性愛告白 2

しつこい性格なので昨日の続き。
同性愛への正しい理解、という観点では平田先生の回答があるので。
せっかく精神科医が回答しているのだから、母親への精神療法という観点で、考察。


この母親の相談内容は大別して2点。
1. 息子とのコミュニケーションに困難を感じている。
2. 息子から同性愛だと告白されたことに不安を感じている。


まず、コミュニケーションの問題だが、母親は「息子はなかなか心を開いてくれていない気がします」と息子のせいにしているが、実際には、母親のほうが、息子が同性愛であることへの不安から、心を開いていないことに問題がある。
ただ、そのことを「息子ではなくあなたが心を開いていないのです」などと直面化させると、母親は自分が責められていると感じ、精神療法的には望ましくないだろう。
「息子さんは大事なことを話してくれたんですね」
「お母さんは、戸惑っているんですね」
などと受容的コメントで、婉曲的に指摘するのがよいだろう。


次に「息子から同性愛だと告白されたことに不安を感じている」だが、認知行動療法的に分析すると次のようになる。
1. 息子から「同性愛なので結婚しない」と告白されたという状況。
2. 「息子は幸せな結婚生活を送れない」という認知。
3. 息子の将来に対する不安、という感情。
4. 息子とコミュニケーションがうまくいかないという結果ないし行動。


2の認知だが、より具体的に言えば、記事中は明記されていないが、「幸せな結婚生活が送れない=不幸な人生を歩む」というall or nothing的認知に歪みがある。


このことに対し、野村先生は「同性愛ではないかもしれないし、結婚するかもしれない」というアドバイスをしている。すなわち、1の「息子から「同性愛なので結婚しない」と告白されたという状況」の否認である。
この状況の否認も認知の歪みといえるが、場合によっては一時的な苦痛の改善につながることもある。
すなわち、息子が同性愛ではないと思うことで、不安感情が減弱する可能性もある。
ただここで問題なのは、この状況の否認は、息子から見れば、自分のカムアウトが否認されたことになることだ。
たとえ、母親が言葉にはっきり出さなくても、無言のうちに「いずれ結婚することを私は期待している」というメッセージは息子に伝わるであろう。
結果として、息子は自分が否定されたと感じ、親子のコミュニケーションは悪化するだろう。そうなると、母親の解決したい問題点1の、息子とのコミュニケーションの解決は遠のくばかりだ。
そうなるとやはり、認知行動療法的には、「「幸せな結婚生活が送れない=不幸な人生を歩む」というall or nothing的認知の歪みに介入すべきであろう。
「同性のものとでも愛情関係を築ける」「幸せな人生を歩める」という妥当な認知へと働きかけるのが、精神療法的にも、妥当だと思われる。