希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想

どこかに、「80年代の若者の運動は、青生舎とピースボートが担っていた」と書いてあって。
『希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想 』を読んでみた。


一番感じたのは、自分が年寄りになってしまったということだ。
すなわち著者の古市憲寿が1985年生まれの若者であることに反応してしまう。
だから、たとえば、ジュリアナについて書かれていても、
「いったい、お前にジュリアナの何がわかるというのだ。こちらは黒服による服装チェックにパスして入店し、お立ち台のお姉ちゃんのパンツを見てたんだぞ」
などと思ってしまう。


著書自体は、ピースボートに乗船し、調査を行ったものをまとめている。
修士論文としては良いんだろうけど…。


若者が、乗船前に、旅行代の割引を得るべく、ピースボートのポスター貼り(3枚で1000円割引)に精を出すうちに、ピースボートと一体化していき、乗船中は9条ダンス(憲法9条をたたえるダンス)を踊り、平和を語りだすこととか書いている。
まあ、このままいけば辻元さんたちも大喜びだが。


だが、旅が終わると旅で仲良くなった若者でつるむことで、心の平安を得て、結局そういう運動には関心が消失する、とあった。


でも、本当かな、と思った。こういうのは1年くらいの観察じゃわからない。
時限爆弾のように心の底にピースボートが埋め込まれているかもしれない。
何年もたって、誰かが区議選に立候補して、仲間たちが再び運動に目覚めるなんてこともあるかもしれない。


本にするのなら、ピースボート乗船者のその後はもう少し長期的に調べてほしかった。


あと、本筋とは関係ないが最後に「東大院生のまとめたきれいじゃないノート」というのがあった。
まあ、冗談ではあるのだが、東大生は「いちおう東大生」というらしいが、慶応大から東大院に進むと「東大院生」とさらっと言えるのかな、と思った。

希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想 (光文社新書)

希望難民ご一行様 ピースボートと「承認の共同体」幻想 (光文社新書)