性ホルモンと性同一性障害

原稿依頼で。
精神薬理学の特集で「性ホルモンと性同一性障害」について書け、と。
で、はたと困った。
性同一性障害の原因」としての性ホルモンについて書くのか、
性同一性障害の治療」としての性ホルモンについて書くのか。
脳科学の最新の知見にもとづいてうんぬん、みたいなことも依頼文に書いてあるので、原因について書くのか。
あるいは「精神薬理学」というくらいだから、お薬のことか。
「もっと、明確な依頼でないと困る」と怒りつつ。
「そもそも、精神薬理学ってなんだ。専門でもないのでよく分からない・・」と弱気にもなり。
しかし、長考することしばし。ナゾが解けた。
性同一性障害以外を見ると「ドーパミン統合失調症」とか「モノアミンとうつ病」とか。
こういった疾患では、原因と治療は表裏一体。
すなわちドーパミン系の異常が示唆され、薬はドーパミン系に働く、みたいな。
だから、原因と治療をそんなに分けて論じる必要がない。
ところが、性同一性障害だけは、原因としての性ホルモンと、治療としての性ホルモンは全く別物。
そのため、私だけが、困った事態となったわけだ。


あらためて、性同一性障害の精神医学的位置づけの独自性を再認識させられたのであった。