ひと:大島俊之さん=性同一性障害の研究に四半世紀

http://mainichi.jp/select/opinion/hito/news/20080901ddm002070128000c.html
ひと:大島俊之さん=性同一性障害の研究に四半世紀
 ◇大島俊之(おおしま・としゆき)さん(61)
 心と体の性が一致しない性同一性障害の人たちについて、「戸籍の性別変更を認めるべきだ」と論文を書いたのは83年。当時、周囲の反応は冷たかった。
 性の問題はテレビでタレントのからかいの対象になることもあり、ある学者からは「“色物”すぎるんじゃないですか」とまで言われた。
 90年代後半、北九州市で開いた講演会の聴衆は2人。そのうち1人は、兄が当事者だという20代の男性だった。酒を飲みながら明け方まで語り合い、別れ際に男性から「実は兄は自殺しました。なぜ兄が死ななければならないのかと思って、話を聞きに来ました」と打ち明けられた。そんな深刻な話を聞くことが、逆風の中、25年間研究に打ち込む原動力になった。
 国会議員に陳情する当事者に手弁当で何度も付き添い、全国各地で講演した。戸籍上の性別変更を認める性同一性障害者特例法は03年、超党派議員立法で成立した。子どもがいる当事者は「家族が混乱する」などの慎重論で対象外だったが今年6月改正法が成立。子どもがいる場合、性別変更を認めない「子なし要件」が、「未成年の子がいない場合」に緩和された。
 「フランスなどの法は、子なし要件がない。日本の法を世界レベルに近づけたい」。訴えてきた「子なし要件全廃」を果たすまで情熱を燃やし続ける。<文と写真・高瀬浩平>
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 ■人物略歴
 徳島県出身。九州国際大教授(民法)で弁護士。栄養学研究の妻と大阪市在住。趣味は上方落語
毎日新聞 2008年9月1日 東京朝刊