「放送の甲子園」に意気軒高

http://www.rakutai.co.jp/news/today/004.html
2006.6.15.  洛南タイムス
「放送の甲子園」に意気軒高
?城陽高校
2年連続ラジオドキュメントで

 府立城陽高校放送部(村田香菜部長、11人)は「ラジオドキュメント部門」で3位に入賞し、2年連続で全国大会へ出場する。入賞作品は「Limited Personality〜制限された個性〜」。性別を超えて生きる人を総称した「トランスジェンダー」の同世代の高校生にスポットを当てた番組。構えない生徒たちの反応を通して「性別も個性の一つじゃないの…」という思いに行き着く話の展開を通して、無意識に男と女のいずれかで分けてしまうものの見方に問題を提起する。

トランスジェンダーを考える

 同校放送部顧問の土肥(どひ)いつき教諭(45)は数学の先生として同校に勤務。放送部の顧問は今年で23年目になる。医学用語の「性同一性障害」より、はるかに違和感なく名乗れるという「トランスジェンダーとしての自分」を肯定できるようになったのは今から8年前のことだ。
 裁判所の審理を経て名前も改名し、自らのありようと正面から向き合う先生と「彼女」を支える放送部の部員たちについては女性月刊誌が取材に訪れ、特集で紹介した経過もある。昨年のコンテストでは「顧問をネタ」にトランスジェンダーに視点を当てた番組を制作。
 葛藤もあった先生の胸の内を聞く展開の結末として「けれども私たちの“どっひー”(土肥先生の愛称)は“どっひー”だ」という生徒の言葉で番組を締めくくった。
 昨年の取り組みを思い返したところから始まる今年の創作番組では、土肥先生を通じて紹介してもらった男性から女性へ移行した高校生へのインタビューと、その後で部員同士が意見を述べ合う展開で「トランスジェンダー」についての思い・考え方をまとめた。
 医学用語の「性同一性障害」という小難しい漢字が続くと何やら構えてしまうものだが、先生と部員との会話は軽いノリで展開。
 難なく実現した高校生のトランスジェンダーと部員とのインタビューでは「男から女になったことで差別はあったか」、「カミングアウト(隠していた性的指向を自ら表明すること)した時の反応」「修学旅行で困ったことは」など様々な関心事について興味深く質問。
 「生まれてきた性別となりたい自分が違うから変わったり、変わろうと努力しているのがトランスジェンダー。それを否定することは、その人自身を否定しているみたいやん」「その人を理解しようと思うなら、避けたり拒んだりせず、一度向き合って話をしてみては。そうすれば自分たちと何ら変わらないというのが見えてくる」と自分たちの意見をまとめている。
 部長の村田さん(3年)は「ドキュメンタリーというと硬くなるので、笑いをとろうとした。導入部で持ち前の軽さを生かした内容にしたこところ、放送を聞いている会場で笑い声が起きたので“やった”と思った」と手ごたえ。
 顧問の土肥先生は「昨年の経験があり、ひとつ踏み込んだ作品になったと思う。これをきっかけにトランスジェンダーについて学んでもらえれば」と話している。【岡本幸一】
 全国大会に出場する城陽高校放送部のメンバーは次の通り(敬称略)
 村田香菜(3年)・神田恵梨華・植田能士・佐々木薫・藤田蓮・吉井風太・岩本捷平(以上2年)・土橋佑香・森康人・藤本佳那美・渡邊紗里(以上1年)