
- 作者: 小谷野敦
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2000/02
- メディア: 文庫
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小谷野先生は、最近では、禁煙運動と戦ってみたり、Macska様と議論してみたりと、幅広いフィールドでユニークな活躍をしているが。
この本は、まじめに文学研究に専念をしていたときのもののようで、興味深い。
なかでも、八犬伝の犬塚信乃と、シェークスピアのハムレットが似ているという議論は面白い。
彼女(浜路、オフィーリア)からの求愛をふたりとも、
犬塚信乃:「女子はすべて水性にて」
ハムレット:「弱気もの、その名は女!」(Fraillty, thy name is woman!)
と似たようなことを言って断る。
で、亡き父の遺志を果たすべくがんばる。
しかし、やはり、犬塚信乃といえば、やはり女装育ちがポイントである。
その辺、ハムレットはどうなのかと思ったら、ラカンが、
「ハムレットの攻撃の対象が、不在のファロスであること」
といってるらしい。
でも、ラカンは私は理解不能なので、勝手にフロイト的に考えると。
ハムレットは男性として同一視していた父をおじに殺されて、母親を奪われ、さらに王位継承権まで危ういということで、本人の男性性は、非常に損なわれているわけだ。
それで男性性を回復すべく、決闘シーンでは、ペニスの象徴である、剣をぶんぶん振り回して、相手を倒すわけだ。
この点、犬塚信乃が女装をやめたあと、妖刀、村雨丸を振り回すの確かに類似する。
そうして考えるとハムレットのかのセリフ、
"To be, or not to be: that is the question."
は
「男であるか、女であるか、それが問題だ」
と訳してもいいのかも。