「心に性別はあるのか?」

ご存知、中村美亜氏の御著書、「心に性別はあるのか?」拝読。

心に性別はあるのか?―性同一性障害のよりよい理解とケアのために

心に性別はあるのか?―性同一性障害のよりよい理解とケアのために

基本的には、御論文がベースになっている。
これも。


日本にありがちな、「心とからだの性の不一致」という性同一性障害概念を問い直す、意欲作。


一部引用。


P96
>「心“に”性別があるのではなく、心”が“性別を生み出す」


P96
>“心と体のズレ”を直すというだけでは不十分である。
>重要なのは、自分自身をどうやったら受け入れるようことができるようになるのかということである。


P101
>自分を受け入れることができるように、そして社会にそれが受入れられていくにはどうしたらいいかを考えていかなくてはならない。


引用部分からも分かるように、もっぱら身体治療と法整備にのみ関心が集中している日本の現状の中で、当事者自らがトランスセクシュアルであることを受け入れることの重要性を主張している。
閉塞し硬直化した日本の現状の中、新たな地平線を開拓する建設的な思索といえよう。


また第3章は、米国における議論の流れが把握でき、文献リストは、ミニ解説がついていて、大変勉強になります。


あと、98ページからは「私たちの仲間―結合双生児と多様な身体の未来」が引用されており、この本の性同一性障害との関連における意味が、的確に述べられていて感銘した。


ついでに、誤字、1箇所指摘。
P38
「トンラスセクシュアル」
マージャンの東場のラスト、みたいでちょっとかっこ悪い。


というわけで、ジェンダー問題に関心のある人全てが必読すべき、良テキストといえよう。


本日現在、アマゾンではまだ売ってないけど。