ダースベイダーとエンパワメント


スター・ウォーズについて話し出すと、とまらなくなる。


アナキンが、ダークサイドに落ちた理由は、いろいろ解釈可能だが。
一つには、「父になることへの不安」があったと思う。
アナキンは、母一人に育てられ、父を知らない。
母と離れて、ジェダイの修行をしていたときも、ジェダイは、恋愛ご法度なので、当然父親モデルはいない。


そんな、アナキンは、自分が父親になろうとしたとき、相当不安だったのではないか。
そこで、アナキンが選択した解決策は
「強い男になること」
という、スーパーマッチョ路線というか、行き過ぎた男性ジェンダー路線であった。


ここで思い出すのが、2005.6.8.日記で論じた「エンパワメント」概念。
http://d.hatena.ne.jp/annojo/20050608/p5


すなわち
「自分は、だめ父ちゃんになってしまう」とびびる、アナキンに対して、
シス卿が
「もっと強くなれ、ダークサイドに入れ」
と間違ったエンパワメントをしてしまったわけだ。
それに、洗脳されたアナキンは、ダークサイドに入り、変な黒ヘルメットかぶって、ダース・ベイダーになって「強い男」になれたと、思ったわけである。


いいかえるならば、内面的弱さを認めることができず、ヘルメットに象徴される外的アイデンティティを作り上げることで、なんとかしのごうとしたわけだ。


しかし、そうしたところで、結局は物事の解決にはならないわけで。
内的不安は続き、それを隠すために、お面をかぶり続ける。


しかし、最後のエピソード6で、息子のルークスカイウォーカーに、暖かくむかい入れて貰える。
母を死なし、子育てもしなくて、悪いことばかりしてきた、だめ父ちゃんであったが。
そんなだめ親父を、息子のルークは父として受け入れてくれたのだ。


すなわち


>ただ存在するだけで十分にすばらしい。がんばって外から力をつけようとしなくても力はすでに内にあるのだから。


と、ルークから正しくエンパワメントされたのである。


シリーズ最後に、ダースベーダーが、ヘルメットをはずし、はげた素顔の顔を見せるシーンは、アナキンが、ルークからのエンパワメントによって、ありのままの自分自身を受け入れられた瞬間だったのである。


そう考えると、このシーンは、映画「ロバートイーズ」で、主人公からの、愛を実感した恋人が、かつらを取り、はげた化粧気のない素顔を見せた瞬間の自己肯定感とどこかつながるものがある。