異性も同性も、好きな人に渡して 女子学生がチョコ配る

2011.2.14.朝日
http://www.asahi.com/national/update/0212/OSK201102120028.html
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異性も同性も、好きな人に渡して 女子学生がチョコ配る
バレンタインデーを控えた今月初め、奈良教育大(奈良市)の食堂で、一人の女子学生が百数十個のチョコレートを学生らに配った。添えたカードには「大切な人に贈ってください。性別にとらわれる必要はありません」。チョコにはある思いがこもっていた。

 配ったのは、奈良教育大3年の榊原衣麻(えま)さん(21)。市販のチョコをオリジナルデザインの包装で包み、贈る相手の名前を「Dear」の字の下に書き込めるようにした。

 榊原さんは昨年、同性愛を「カミングアウト」した。自分の体に違和感はないが、好きになる相手は女性。高校生の時、親友から「恋愛対象として見てるかも」と言われ、「好きってこういうことか」と自覚した。2人だけの秘密にして1年弱付き合った。

 気持ちのすれ違いで別れたものの、大学に入っても忘れられず、誰にも話せないまま過ごした。「言ったらみんなに白い目で見られる」。一生秘密にしようと思う一方、「ただ女性が好きなだけで、何でこんなに悩むのか」と疑問に感じ始めた。

 意を決して打ち明けた先輩に「(同性愛)けっこういるよ」とさらっと返された。拍子抜けしたが、気持ちは一気に楽になった。それから恐る恐るまわりに話し始めたが、あからさまに態度を変えた人は今のところゼロという。一番心配だった母には「衣麻は衣麻だよ」と言われ、祖母からは「最愛の衣麻を応援するよ」と手紙をもらった。

 「あるのは偏見ではなく、偏見があるという思い込み」と感じ、「偏見を恐れず、みんなが自分らしく生きられる社会を作りたい」との思いが募った。昨年10月、学園祭で、一人で悩んでいた時やカミングアウトした時の気持ちをつづったブログの文章を展示。3日間で150人以上が訪れた。11月には、1年生向けの授業で講演した。
今回、「バレンタインチョコは同性同士であってもいいのでは」とメッセージ付きのチョコを考えた。ブログ展や講演は興味を持って訪れた人にしか伝えられないが、「チョコなら、もらった人がさらに誰かに伝えてくれる」と期待した。

 1万円の予算で180個購入。友人2人も手伝って、チョコは食堂中の男女の学生らに行き渡った。友人の3年、宮下彩夏さん(21)は「アクティブな衣麻はすごい。心から応援しています」。

 榊原さんは将来、中学の保健体育の教諭になり、生徒らに話すつもりだ。「私が同性愛を堂々と語ることで、少しずつでも社会が変わればうれしい」(成川彩)