子どもの性同一性障害 深まる研究、広がる理解

http://www.kobe-np.co.jp/news_now/news2-739.html
神戸新聞 2007.5.31.

子どもの性同一性障害 深まる研究、広がる理解
 兵庫県播磨地域に暮らす小学二年の男児(7つ)=当時=が、心の性と身体の性が食い違う「性同一性障害GID)」と診断され、女児として通学していることが報じられ、一年が過ぎた。男児は今春、三年に進級し、元気に通学している。今年三月にあったGID学会では、男児の主治医が経緯を説明した。子どものGIDに関する発表も相次ぎ、研究テーマとしても注目を集めた。一方、GID生徒交流会は回を重ね、当事者以外にも輪が広がっている。動き始めた小児GIDの周辺を探った。(社会部・霍見真一郎)
学会盛況 卒論テーマにも/当事者交流会 教員も参加

 三月十六、十七両日、埼玉県所沢市で開かれたGID学会第九回研究大会には、全国から関係者約四百人が集まり、医師や当事者の発表が続いた。「播磨の男児」の主治医、大阪医科大の康純(こうじゅん)医師は、男児の言動を国際的な診断基準に照らしてGIDと診断した経緯を説明。今後の方針など、医師からも質問を受けた。
■問題行動調査
 岡山大学の研究チームは、一九九七―二〇〇六年に同大ジェンダークリニックを受診したGID患者六百六十一人を対象に分析した、問題行動の発生率を紹介した。発表によると、不登校が24・5%▽自殺を考えたのが68・7%▽自傷・自殺未遂は20・6%。思春期を迎える中学などに時期が集中していたという。
 このほか、GIDの子を持つ母親が障害を受容する過程をたどり、ケアの必要性を説いた発表や、低年齢時の診断と治療などを医師らが議論するシンポジウムも盛況だった。
■体験談参考に
 学校に通う当事者同士も交流を始めている。昨年七月、京都や大阪の学校教員が呼び掛け、五人で始まった「トランスジェンダー性同一性障害)生徒交流会」。五月二十六日、大阪市で開かれた四回目の参加者は、十一人に増えた。
 毎回昼食を参加者全員で作って食べながら、制服やトイレなど学校での苦労話を話し合う。初めて参加した兵庫県内の女子中学生は「ここでしか聞けない話も多く、また参加したい」とにっこり。同伴した母親も「久しぶりに笑顔をみた」と喜んでいた。
 学校教員の参加も多く、三回目からは成人の当事者をゲストに迎え、経験談を聞く時間も設けている。
■根本的解決を
 関早織さん(22)は駒沢大学四年の時、二回目の生徒交流会に参加した。卒業論文のテーマに「GIDと教育」を選び、東京都の元養護教諭京都府の高校教諭にインタビューした。GID性教育として扱う関東の手法は「反論を受けやすい」とし、人権問題として教える関西を評価した。
 関さんは卒論で、「マイノリティー(少数者)という言葉には弱者のニュアンスが強く付随する」と書いた。そして「マイノリティーを理解するだけではなく、そういった差別を生むマジョリティー(多数者)側の問題を探らなければ、根本的な解決とはいえない」と指摘した。