衆院選:性同一性障害、難病… マイノリティー候補も続々

毎日新聞 2005年8月24日 12時06分
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/senkyo/05shuinsen/news/20050824k0000e010057000c.html


衆院選性同一性障害、難病… マイノリティー候補も続々

 多数意見が反映されやすいとされる小選挙区制の総選挙に、あえて小さな声を届けようと立ち上がった人たちがいる。郵政民営化法案への賛否ばかりに耳目が集まる中、「性同一性障害」「難病」「少数民族」というそれぞれの立場から国政に挑戦する。【青島顕、影山哲也、田中泰義】

 心と体の性が一致しない「性同一性障害」の猿田玲氏(27)=茨城県取手市=は社民党公認で茨城3区から立候補する。同じ障害を持つ東京都世田谷区議が03年に誕生したが、同党によると、障害を明らかにしたうえで国政選挙に立候補する人は初めて。

 戸籍上は女性だが、幼いころから性に違和感を覚えた。大学卒業時には就職先で、人事担当者に「男として働きたい」と話した途端、内定が取り消された。アルバイトで生計を立てながら、行政文書から性別欄をなくす活動などを続けている。「障害を持つ人が後ろめたい思いを抱えないで、一人の人間として生きられるような社会を作りたい」と立候補を決意した。

 難病の筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)患者で、訪問介護サービス会社社長の藤本栄さん(44)=名古屋市緑区=は愛知3区から無所属で立候補する。「みんなが暮らしやすい制度を作っていきたい」が立候補の動機だ。

 短大卒業後、保険代理店の経営などをしていたが97年、筋力が徐々に低下するALSを発病。人工呼吸器をつけ、車いすで生活している。ひらがなが並ぶ文字板を視線で示したり、アゴをわずかに動かすことで意思伝達できる装置を使って、妻友香さん(43)らと会話する。選挙活動には大きな支障があるが「街頭で旗を掲げたり、文字板で示した文章を付き添いの人に語ってもらい、政策を訴えたい」と意欲を見せる。

 鈴木宗男衆院議員が代表の「新党大地」からは、比例北海道ブロックアイヌ民族多原香里氏(32)=札幌市手稲区=が出馬する。母親がアイヌ民族で、自身は北海道教育大岩見沢校を卒業後、国連人権高等弁務官事務所で研修して先住民問題を学んだ。現在もフランスの国立社会科学高等研究院で同問題の研究を続けている。

 アイヌ民族では、萱野茂氏が92年参院選比例代表で出馬。94年に繰り上げ当選し初めて国政で議席を得たが98年に引退した。衆院議席を得れば初めてになる。18日の会見で多原氏は「鈴木さんはアイヌ文化振興法の制定に努力してくれた。そのお手伝いがしたい。先住民の尊厳や権利の確立に尽力したい」と語った。

毎日新聞 2005年8月24日 12時06分