簡易保険に性転換チェック?

8月3日西日本新聞夕刊

簡易保険に性転換チェック?郵便窓口で性別確認「お役所的」と批判の声
古い旅券や戸籍謄本求める


 性の変更を認めた「性同一性障害特例法」施行に伴って、郵便局が「簡易保険」加入者に契約時の性別」の証明を求めたことが、各局の窓口でトラブルを引き起こしている。郵政公社は「保険料が男女で異なるから」と説明するが、わざわざ古い旅券や戸籍謄本を提示しなければならない加入者側からは「まさにお役所体質。民営化にはほど遠い」と、不満が噴出している。
 問題になっているのは簡易保険の保険金や生存給付金を受け取る加入者の性別確認。平均寿命の違いから男性の保険料は女性より高いため、保険証書の性別に間違いがないか確認するのが原則となっている。
 しかし、簡易保険は「手続きが簡単なのがメリット」(日本郵政公社九州支社)。実際には利用者の申し
出通りに証書を作成し、支払い時も免許証などで身元をチェックするだけだった。
 ところが、昨年七月の「性同一性障害特例法」施行で郵政公社は方針転換。「加入時とは性別が変わっている可能性がある」として今年五月、過去の旅券や戸籍謄本などで加入時の性別を再確認するよう各郵便局に通達した。九州支社によると、加入者が性転換していた事例はまだないという。
 過去の旅券は処分している加入者が多く、戸籍謄本の提示はプライバシー侵害にもつながることなどから、窓口でもめるケースが続出。六月末に生存給付金を請求した福岡市内の男性(六九)は「過去の性別を証明する書類など手元にない。プライバシーが詰まった戸籍謄本を取ってこいとはお上意識そのものだ」と憤る。
 批判を受け、郵政公社は六月から「性転換手術は受けていない」との念書の提出で済ますよう再び方針転換した。
 こうした郵政公社の対応について、民間の大手生保広報室は「契約時に性別を確認するだけで十分。過去の性別の証明を求めることなど、利用者の利便性の観点からは考えられない」と話している。