スクールカウンセラー財務省報告書


臨床心理士/スクールカウンセラー関係調べていたら、やや古いデータだが、財務所の報告書を発見。
興味深いので紹介。
http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy160622/1606d_19.pdf
スクールカウンセラーは原則、臨床心理士(国家資格ではなく、現在、日本臨床心理士資格認定協会が発行している資格)が優先的に配置されるのだが。
ちなみに、臨床心理士が優先的に配置されるのは、「心のノート」作成などで、文部科学省と協調関係にある河合隼雄先生のご尽力によるらしい。
http://www4.ocn.ne.jp/~jcbcp/kyokai.html


この報告書では
スクールカウンセラー
臨床心理士
スクールカウンセラーに準ずるもの:
臨床心理士の資格はないが、大卒以上で心理臨床業務の経験が数年あるもの


について比較調査。


何を調査したかというと、学校における問題行動件数の減少率。
平成13年と14年で比較。

結果:


スクールカウンセラーのみ配置する自治
配置校:11.7%
未配置校:10.7%


準ずるものを30%以内で配置する自治
配置校:16.8%
未配置校:15.9%


準ずるものを30%以上で配置する自治
配置校:30.4%
未配置校:17.4%


わかりづらいかもしれないが、つまり。


スクールカウンセラーのみ配置する自治体と、準ずるものを30%以内で配置する自治体では、スクールカウンセラーがいてもいなくても、問題行動件数の減少率には、ほぼ差はない。


臨床心理士ではないものが30%以上で配置する自治体では、問題行動件数は、配置校での減少が見られる。


ということだ。
つまり、より、はっきりいうと、
・ 学校の問題行動の解決には、臨床心理士スクールカウンセラーは役に立たないが、
臨床心理士でないスクールカウンセラーは役に立つ。


という結果のようだ。


財務省報告の改善策にも
>「準ずる者」をより活用しやすくべきである。


と書かれていた。

考察としては、
1. 結果は偶然
2. 臨床心理士には、問題行動解決を阻害する何らかの属性・特性がある。
3. 臨床心理士でない心理職には、問題行動解決を促進する何らかの属性・特性がある。

が考えられよう。


ぶっちゃけたところ、
臨床心理士スクールカウンセラーは、資格があるだけで任命された、経験の乏しいものが多いが、
臨床心理士でないにもかかわらず、任命されるものは、相当実力のある経験豊富なものが多い、
ということだとは思う。

「臨床心理士及び医療心理師法案要綱骨子」に対する緊急見解


臨床心理職の国家資格のための緊急ブログ:2005年7月25日 (月):精神科町医者さんのコメントより
http://kokoroshikaku.cocolog-nifty.com/kinkyu/2005/07/post_2d42.html

下記が「日本精神神経学会の緊急見解(7/21)」です。
平成17年7月21日
臨床心理士及び医療心理師法案要綱骨子」に対する緊急見解
社団法人 日本精神神経学会
               理事長 山 内 俊 雄
 本学会は、医学医療を初めとしたさまざまな領域における心理職の活動、身分等については、国家資格化が必要であると認識し、これまでその法制化に賛同してまいりました。
 しかしながら、このたび公表された「臨床心理士及び医療心理師法案要綱骨子」(以下、「要綱骨子」)につきましては、医学基本領域学会の中で最も近接の専門学会として、また「要綱骨子」が包含する医学医療・保健・福祉・教育・その他の分野において、すでに長年にわたり活動してきた専門家集団として、以下のような事由により重大な懸念を認めたため、緊急見解を表明いたします。
 関係各位には、国民の心の健康の保持・向上に禍根を残し、当事者の不利益につながることのないように、拙速な法案上程を避け、関連する医学医療の団体や学会と十分な協議と検討を行うことをお願い申し上げます。本学会は、今後とも適切な国家資格化法が制定されるように、微力を尽くす所存です。
1.臨床心理士医療心理師の行う業務について
 両者が行う業務とされている、相談、分析、助言、指導、その他の援助とは、活動の分野や対象にかかわらず、その多くは医行為の一環であることが明確にされていない。とくに医療現場で医行為が規定されない場合は責任体制が曖昧となる。また、医療現場だけではなく、教育の場では、子どもたちが「不登校」の場合、実態は不安障害、適応障害摂食障害うつ病統合失調症などの精神疾患であることが少なくない。労働の場では、就業困難な場合に類似の現象がある。こうした現実は、扱われる対象が精神疾患であるならば診断行為や心理社会的介入は医行為であり、精神科医の診療と密接な連携とによって対処されるべきであり、そのほとんどは精神医療の範疇に入るものである。臨床心理士が、それらの心理的対応において精神疾患の有無を判断しない場合、出来ない場合またその存在に対して適切な対処を欠いた場合、重大な問題が生じることになる。
2.臨床心理士医療心理師の扱う対象について
両者の扱う対象の違いが不明確であるばかりか、精神疾患を有する患者、身体疾患に伴う精神疾患を有する患者、あるいはこれらから生じる患者の心の問題に重大な危険性が生じる。すなわち、臨床心理士は教育、保健医療、福祉その他の分野において「心理的な問題を有する者」を対象とし、医療心理師は「傷病者の精神状態」を対象としている。しかし、この2つの対象はそもそも分けがたいだけではなく、精神医学的診断を要するものである。これは、医学医療、保健、福祉の分野だけではなく、教育の場や労働の場でも同様である。これを法の文言として分けることは、「心理的な問題を有する者」の中の重要な精神疾患を見落とす可能性が高いので看過出来ないばかりか、「精神疾患」と「心理的な問題」とを切り離したり、「傷病者」の「精神状態」を特別視することは、精神医学・医療を曲げ、かつ精神疾患や身体疾患を有する方々への差別と偏見を助長しかねない。「心理的な問題を有する者」という表現は「医学医療」概念を覆い隠すためのものと言わざるを得ない。
3.臨床心理士医療心理師の役割について
 臨床心理士は教育、保健医療、福祉その他の分野において「自由に」活動できるのに対し、医療心理師は医師が「傷病者」を扱う医療提供の場合でのみ活動できるとされている。両者の役割はあたかも別の領域であるかのように表現されているが、すでに述べたようにそれぞれの活動内容と対象者には本質的な差はない。したがって、2つの資格を設け、両者の権限・資格に格差をつけることは、合理的な理由がない。
4.資格認定が不十分であることについて
 医療心理師の試験は「厚生労働大臣」が行うことと明記されているのに対し、臨床心理士は「主務大臣」となっており、この相違の理由が不明である。臨床心理士も医療提供の場で活動できるように定めている以上、医療心理師と同一であるべきである。
 また、資格認定には、医療領域での臨床実習の経験が不可欠であるが、「要綱骨子」では全く触れられていない。現行の臨床心理士の臨床実習ははなはだ貧困であり、医学医療における臨床実習とは次元も質や内容も大きく異なっている。
5.医療現場で予想される混乱について
 臨床心理士医療心理師という2つの資格が同一の職場で同一の業務に携わることは、医療現場におけるチーム医療においても、あるいはまた心理職が活動するさまざまの現場においても混乱を生じ、当事者に不利益をもたらすことが危惧される。