小児内科54巻10号(10月号)
小児科医が知っておくべき性の知識
小児期の性別不合の診断とメンタルサポート……針間克己
P1711-P1714
鎌倉殿の13人、最終回で、北条義時を殺すのは息子の泰時と予想。
関係者総意の上でだろうが、主犯は泰時だろう。
息子の父親殺しというのが、ギリシャ神話エディプス的で最もドラマチック。
また、善良だった泰時が、最後に手段のためには身内を殺す、というダークサイドに落ちるのは、結局、父と同じ人間になるあたりもドラマチック。
表面的な殺害理由は、関係者総意の上で、これ以上の義時の専横に反対し、だろうが。
泰時の真の動機は、源実朝を殺された恨み。
自分を愛してくれた実朝を殺されての怒り。
さらに言えば、実朝を殺されて、初めて自分も実朝を愛していたことに気が付く。
しかし、求愛歌に返歌しなかった自分。
返歌しなかったことは、精神的には、泰時も実朝を殺していた。
そんな自分自身への怒りが、父親への怒りへとつながり殺害へ。
予想当たる気がする。
「ガリレオの中指」拝読。
著者のアリス・ドレガーは、20年ほど前は、性分化疾患への医学的介入の慎重論者、運動家として知られた。
また、日本語訳のある「私たちの仲間」では、さらに結合双生児を切り離そうとする医学的介入への警鐘を鳴らした。
2015年に出版された本著は、いくつかの話題があるが、共通するのは。
倫理的に繊細で議論のあるテーマで、ある学者が独自の見解を示す。
それに対して強い批判が起きる。
そして・・
という流れ。
トランスジェンダー、小児性愛、レイプ、未開の民族、というテーマに関しては、ドレガーは、批判された学者を味方する。批判の方法や中身を徹底検証し、その不当性を示し、「学問の自由を守れ」と主張する。
一方で、性分化疾患の胎児への治療へは、治療者をマスコミやインターネットを用い徹底追及し、「不当な医学行為をするな」と主張する。
どちらも「真実」に基づき行っているという。
ちなみに「ガリレオの中指」とは、ガリレオがファックユウしているのではなく、中指が天井を指し、それでも地球は動いている的な、真実の追求の在り方を示す。
ドレガーの真実への追求は感嘆するばかりだが。
ただ立場を変えると、トランスジェンダー、小児性愛、レイプ、未開の民族への「学問の自由」は、当事者の権利を損ねる恐れがある。
また、性分化疾患治療の追求は「学問の自由」を損ねる恐れがある。
でもドレガー的にはたぶんそこに矛盾はなく、「真実」に基づいているからいいのだという考えだろう。
ただ個人的にはそこまでの「真実」を見極める自信などない。
アメリカは何かと非常に激しい対立になるのだなと、文化の違いも感じた。
あと、トランスジェンダーについて、付記する。
ドレガーが弁護した、ベイリーの「the man who will be queen」だが、タイトルに、差別用語おかま的ニュアンスの強い「queen」を用いている点や、わざわざ、表紙写真が屈強な足+ハイヒール、の点など、「鈍感」以上の悪意を感じる。トランスジェンダーが怒るのも当然。怒り方が一部か過激な人がいたからと言って、怒った人々をすべて否定するのはおかしいと思う。