「性同一性障害に関する委員会」による性別違和が主訴の症例数と国内外性別適合手術例数の推定調査

GID性同一性障害)学会第19回研究大会・総会(札幌
http://gid19.kenkyuukai.jp/special/?id=22084


抄録、発表では「性別違和」と書いているのに、新聞記事では「性同一性障害」に。
まあ、日本語はいいけど、せめてjapamtimesの方は「gender dysphoria」でニュースにしてほしかった。


性同一性障害に関する委員会」による性別違和が主訴の症例数と国内外性別適合手術例数の推定調査
針間克己 他
平成25年の第1回調査に引き続き、日本精神神経学会の「性同一性障害に関する委員会」は、性別違和が主訴の患者が多数受診していると推測される医療機関へアンケート調査を行い、最高裁判所発表の戸籍性別変更者数の統計も利用し、国内の性別違和が主訴の症例数および、国内外性別適合手術例数の推定調査を行った。
[調査方法]
26の医療機関に、平成27年12月末までに性別違和を主訴に受診した1)症例数(FTM,MTF別)、2)特例法診断書(第1署名)作成数(FTM,MTF別)、3)特例法診断書における性別適合手術の実施医療機関の国内外別(FTM,MTF別)のアンケート調査を行った。
[結果]
・24医療機関からは平成27年12月末までの回答が得られた。2医療機関からは前回と同様の平成24年12月末までの回答であった。
・受診者数:合計22435例。FTM14747例(65.7%)、MTF7688例(34.3%)。
・診断書数:合計4671例(性別不明813例)。FTM2929例(75.9%)、MTF929例(24.1%)。
・手術:国内1407例(51.5%)、国外1379例(48.5%)、
FTM国内1130例(52.9%)、FTM国外1002例(47.1%)、
MTF国内277例(42.4%)、MTF国外377例(57.6%)
・戸籍変更率 合計20.8%(4671/22435)、FTM23.3%(2929/12573)、MTF16.0%(929/5789)
[考察]最高裁の発表では、平成27年12月末までに6021名が戸籍変更。
よって、77.6%(4671/6021)を把握。
推測方法1.6021/0.208=28919例が日本全体での受診者。
推測方法2.戸籍変更FTMMTF比より、推定戸籍変更者はFTM4570例、MTF1451例。
FTM推定受診者19617例(4570/0.233)、MTF推定受診者9042例(1451/0.16)。
よって合計の28659例が日本全体での受診者。
なおこれらの数値は延べ受診者数。一人の患者が複数の医療機関受診することもあり。複数医療機関受診者の割合は不明だが、2~3割いると仮定すれば実数は延べ人数の85~90%となり、約24000例から26000例となる。

DSM-5の日本語訳への疑問およびICD-11の「gender incongruence」の日本語訳案の検討

GID性同一性障害)学会第19回研究大会・総会(札幌
http://gid19.kenkyuukai.jp/special/?id=22084
DSM-5の日本語訳への疑問およびICD-11の「gender incongruence」の日本語訳案の検討
はりまメンタルクリニック 針間克己

1. DSM-5の「性別違和」の説明文の日本語訳は不適切ないし不統一な箇所が多数ある。

・gender:「ジェンダー」「性別」→「性別」。
・gender reassignment:「ジェンダーの再指定」「性別の再適合」→「性別の再指定」。
・transition:「移行」「変更」→「移行」
・cross-sex hormone treatment:「異性間の性ホルモン治療」「性転換ホルモン治療」→「反対の性別へのホルモン治療」
・cross-gender behavior:「性別転換行動」→「反対の性別の行動」
・transgender spectrum:「性転換の広がり」→「トランスジェンダースペクトラム
・autogynephilia:「自己女性化愛好症」→「自己女性化性愛」
・androphilia、gynephilia:「男性嗜好」「女性嗜好」→「男性性愛」「女性性愛」あるいは「男性への性指向」「女性への性指向」

2.ICD-11の「gender incongruence」の日本語訳は数案あり検討中である。

留意すべき点。
・assigned genderとexperienced/expressed genderがcongruent でないという意味。
・experienced/expressed genderは男女二分でなく、spectrumである点。
・病理性がないこと。

訳語案:
「性別不一致」:男女二分的ニュアンスが強い?あか抜けない?
ジェンダー不調和」:「ジェンダー」は社会的構築という語感。「不調和」は否定的意味。
「性別不合」:「不合」はあまり使わない言葉。無味乾燥な四字熟語。