「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律案」成立にあたって(談話)

2003/07/10
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律案」成立にあたって(談話)
法務ネクスト大臣 千葉景子
人権政策会議座長 今野 東
http://www.dpj.or.jp/news/?num=10613

性別変えた夫の子、妻出産でも婚外子扱い 法務省見解

朝日2010.1.10
http://www.asahi.com/national/update/0109/OSK201001090155.html
http://www.asahi.com/national/update/0109/OSK201001090155_01.html
http://www.asahi.com/national/update/0109/OSK201001090155_02.html
性別変えた夫の子、妻出産でも婚外子扱い 法務省見解
心と体の性別が一致しない性同一性障害との診断を受け、女性から男性に戸籍上の性別を変更した夫が、第三者精子を使って妻との間に人工授精でもうけた子を、法務省は「嫡出子(ちゃくしゅつし)とは認めない」との見解を示した。全国で6件の出産例を把握、非嫡出子(婚外子)として届けるよう指示した。だが、同じ人工授精でも夫が生来の男性の場合は嫡出子として受理しており、「法の下の平等に反する」との指摘が出ている。

 性同一性障害者が自ら望む性別を選べるよう、2004年に施行された特例法に基づき、兵庫県宍粟(しそう)市在住の自営業Aさん(27)が戸籍を「女」から「男」に変更したのは08年3月。翌月、妻(28)と結婚した。男性としての生殖能力はないため実弟から精子提供を受け、妻が体内受精で昨年11月に男児を出産した。

 市役所に「嫡出子」として出生届を出そうとしたところ、宍粟市はAさんの性別変更を理由に受理を保留。法務省の判断を受け、今月12日までに「非嫡出子」と書き改めて届け出るよう、昨年末にAさんに通知した。嫡出子は、法律上の婚姻関係にある夫婦から生まれた子。非嫡出子となれば、戸籍に父親の名は記載されない。

 嫡出子と認めない理由について、法務省朝日新聞の取材に「特例法は生物学的な性まで変更するものではなく、生物学的な親子関係の形成まで想定していない」と文書で回答。出生届を出す窓口で、戸籍から元は女性だったとわかるため、「遺伝的な父子関係がないのは明らか」(民事1課)と説明している。

 他人の精子を使う非配偶者間人工授精(AID)は、性同一性障害者に限らず夫の生殖能力に問題がある場合の不妊治療として戦後広く行われてきた。1万人以上の子が生まれたとされ、遺伝的な父子関係がないにもかかわらず、一般的には嫡出子として受理されている。「窓口ではAIDの子かどうか、わからないため」(宍粟市)だ。
法務省の見解は、同じ人工授精で生まれ、同様に遺伝的な父子関係がない子であっても、父親が生来の男性の場合と性別変更で男性になった場合とを分けて対応する立場を明らかにしたものだ。

 ただ、民法には夫が生物学的な男性であるべきだとの規定はない。特例法は性別変更後は新たな性別で民法の適用を受ける(4条)と規定している。Aさんは「男として結婚は認めたのに、父親としては認めないのはおかしい」と反発。市の求めには応じず、市が非嫡出子として手続きを進めた場合は、神戸家裁に不服申し立てをする。

■法整備、現実に追いつかず

 性同一性障害を抱える人が自ら望む性別で社会生活が送れるよう、制度化したのが特例法だった。昨年3月までに戸籍上の性別を変更した男女は1468人。性同一性障害者はこの何倍もいるとみられる。だが今回、法務省が示した見解は、法に基づいて性別変更した人をなお「別扱い」にするもので、今後各地で争われる可能性が高い。

 民法は「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」(772条)と規定。法的に結婚した夫婦の間に生まれた子を嫡出子と定義している。夫以外から精子の提供を受ける非配偶者間人工授精(AID)でも、夫の同意があれば嫡出子として扱われてきたのは、そのためだ。

 日本産科婦人科学会の倫理委員会は、特例法により女性から男性に性別変更した人と妻がAIDを受けることについて「ガイドラインに抵触しない」との見方を07年に示した。学会理事長の吉村泰典・慶応大医学部教授も「法律婚であることがAIDの要件。今回のような夫婦に実施するのを否定する理由はない」と明言。ことは法の受け皿の問題であるのは明らかだ。

 早稲田大学の棚村政行教授(家族法)は「民法は夫について生来の男性とは規定しておらず、特例法でも特にルールを設けていないのだから性同一性障害者を別扱いする理由はない」と指摘。
一方、学習院大学の野村豊弘教授(民法)は「民法は夫婦間の自然生殖を前提としている。今回のケースは、生来の男性が夫である場合の人工授精と違って夫の子ではあり得ないということが客観的に明らかなので、民法772条の嫡出子とみる『推定』は働かず、法務省のように判断するしかない」と話す。

 だが、両氏とも「第三者精子卵子を使って生まれた子と親の関係を決める法整備が現実に追いついていないことが今回の問題を招いた一因だ」という点では一致している。まずは特例法で子の法的な位置づけを明確にするなど、法整備を急ぐべきだ。(上原賢子)


以下インターネット上には掲載されていないが、実際の紙面には掲載されていた記事を追加。


性同一性障害を差別
性同一性障害学会理事長の大島俊之・九州国際大大学院法学研究科長(民法)は「生まれた子と遺伝的な父子関係がない点では、Aさんも、同じ人工授精によって子をもうけたほかの多くの夫も同じ。性同一性障害者への差別だ」と話している。


父親になれない「なぜ」
嫡出子と認めず 夫婦の決断 国の壁
「父親」になれた喜びに胸を踊らせていた。性同一性障害を乗り越え、新たに男性となったAさん=兵庫県宍粟市=にとって、人工授精は妻とも十分に話し合った末の結論だった。だが、生まれた子は法務省に嫡出子としての届けを拒まれた。「父親になれないのはなぜ?」と悔しさを募らせている。(上原賢子)
 Aさんが女性だったことは戸籍を見ればわかる。昨年11月、市役所で出生届を出す際に押し問答になったのはそのためだ。嫡出子は法律上の婚姻関係にある夫婦から生まれた子、それ以外が非嫡出子−。「それなら僕らは結婚しているから嫡出子や」と詰め寄ったが、かなわなかった。
 非嫡出子では国に父親と認められないことになる。嫡出子にこだわるのは、長く性同一性障害に苦しんだ末に手に入れた「男であること」も否定されたと感じるからだ。
 2004年に性同一性障害との診断を受けた。妻とはその2年後、パーティーで知り合った。自分を男と思い込んでいた妻に「元は女性だった」と打ち明け、交際を申し込むまでに1年かかった。妻は驚いたが、誠実な人柄にひかれた。
 2年前に結婚。「子どもがほしい」と言い出したのはAさんだ。男性ホルモンの投与は肝機能障害や心血管疾患のリスクを高めるとも聞いた。「将来、僕が先に死んで妻が一人になっても、支えてくれる子を残しておきたい」。実弟精子を提供してもらおう、と妻に相談した。妻は半年以上迷った。「夫に残りの人生、生きていてよかったと感じてほしい」と心を決めた。
 11月4日午後、体重2310㌘の元気な男の子が誕生。寝顔を見て「おれの息子だ」と確信した。
 いつか性同一性障害のことを話してきかせるつもりだ。「血のつながりでは親子ではないけれど、父親はおれなんだよ」と伝えたい。


http://www.47news.jp/CN/201001/CN2010011001000143.html
性同一性障害の夫に嫡出子認めず 兵庫県宍粟市役所
 性同一性障害で、戸籍の性別を女性から変えた兵庫県宍粟市の自営業男性(27)が、弟の精子の提供を受け非配偶者間人工授精(AID)で妻(28)との間に生まれた子どもの出生届を市役所に提出したところ「非嫡出子」として届け出るよう指示されていたことが10日、男性への取材で分かった。

 夫が生まれつき男性であればAIDで生まれても自治体には分からないため、嫡出子として受理されるのが一般的。性同一性障害学会理事長の大島俊之九州国際大教授は「性同一性障害特例法に基づき性別を変えた場合、自治体が戸籍で把握でき、父子関係が認められないことになる。正式な婚姻関係があるのに、差別的な取り扱いだ」と指摘している。

 男性は2008年3月に戸籍の性別を変更し、翌月結婚。実弟から精子の提供を受け、妻は昨年11月4日に男児を出産した。同月5日に市役所に出生届を出したが、市の担当者が性別変更を知っていたため、嫡出子としての受理を拒否。翌日、非嫡出子としての届け出を指示され、養子縁組するよう勧められた。

2010/01/10 13:15 【共同通信


http://mainichi.jp/select/wadai/news/20100111k0000m040061000c.html

毎日
性同一性障害:妻が人工授精で出産…国、嫡出子と認めず
 心と体の性が一致しない性同一性障害のために女性から男性に戸籍変更した夫と妻が、第三者精子を使った人工授精でもうけた子について、法務省が非嫡出子として扱うよう求める見解を示していることが分かった。障害による性別変更を認めた特例法の施行後、法務省が把握する同様の相談例は全国で6件に上る。「生物学的に出産は不可能」との理由だが、「法の下の平等に反する」と反発の声も上がっている。

 08年3月に女性から性別変更した兵庫県宍粟市の自営業の男性(27)は、実弟から精子の提供を受け妻が昨年11月に出産した。市に出生届を出したが、性別変更を理由に受理を保留され、子を非嫡出子として届け出るよう指示された。男性は8日に嫡出子として改めて出生届を投かん。市が非嫡出子として手続きを進めた場合には、神戸家裁に不服申し立てするという。

 市が法務省に判断を仰いだところ、「実子ではないことが明らかで、非嫡出子に書き改めるように」との回答があったという。

 04年7月施行の特例法は、家裁の審判を受けることで戸籍の性別変更を可能にした。法制度上の戸籍変更や婚姻は可能だが、法務省によると、子については「生物学上は同性同士で、子をもうけることは不可能」との考えから、出生届を受け付けた自治体からの問い合わせには、非嫡出子として受理するよう通知しているという。

 法務省は「民法は非嫡出子と親が養子縁組を結んだ場合、嫡出子の身分を得ると定めており、養子縁組すれば身分上、相続などの差別を受けることはない」と説明している。

 法務省によると、夫以外の提供精子を使う非配偶者間人工授精(AID)の場合、生来の男性と女性が届け出ても非嫡出子と判断される可能性がある。実際には人工授精であるとの事実を自治体に届け出ることはなく、嫡出子として受理されているという。

 男性は「同じ人工授精で生まれても、父親が生来の男性である場合は嫡出子と認められているのにおかしい。国に男であることを否定されたようだ」と話している。【谷田朋美、石川淳一