「男であれず、女になれない」

「男であれず、女になれない」拝読。
http://ameblo.jp/fulllovesta-pei/theme-10101672383.html
https://www.shogakukan.co.jp/books/09388549

最初、目次を読んで、章のタイトルが村上春樹っぽいなあ、と思ったが。


>序章 惰性で生きるには、長すぎる
第一章 無邪気か無垢か、はたまた無知か
第二章 感情の氾濫は、現状への反乱だったのかもしれない
第三章 自覚からの向上心は、試行錯誤と名乗る迷走なのだろうか
第四章 解決策のない事象に対する、決着の理論
第五章 存在の確認は、過去と未来の在り方を証明する
第六章 それでも、ハッピー量産体制


中身の文章は、村上春樹的ではなく、ときどき、「です」と文末が締まるのが印象的。


で、話は、同性愛にも性同一性障害にもアイデンティティは持てず、
「男であれず、女になれない」セクシャリティとして生きていく。
後半、ホルモン療法をするわけでもないのに、男性的特徴をなくすべく、外性器手術(詳細不明だが、陰茎切除、睾丸切除、造腟はせず?)をする。
でもそれで格別苦悩が軽減するわけでもなく、術後、出血多量になったり、困難もあり。


全体として、LGBT体験談本にありがちな、苦悩→自己肯定(あるいは治療)→めでたし、
みたいなん感じではないし、社会や親への恨みつらみが書かれているわけでもない。


ひたすら自己を見つめている。その思考は深まったり、あちらこちらにいったり。
既存のセクシュアリティ物語に回収されることなく、自分を自分の言葉で見つめていく。
純化されえない、人の姿が丹念に描かれ、興味深い一冊。


でも、体のためには、1日プレマリン1錠でいいから飲んだほうがいいと思う。

男であれず、女になれない

男であれず、女になれない