アステイオン 83号 特集 マルティプル・ジャパン―多様化する「日本」

古代アテネの知識人になるべく、雑誌「アステイオン」83号拝読。
http://www.suntory.co.jp/sfnd/asteion/just-issued/index.html
本号は、マルティプル・ジャパン―多様化する「日本」、という特集。
均一な日本人、ではなく、民族、セクシュアリティなどが多様な日本、という視点からの特集。



歴史の中の多様な「性」 三橋順子
http://www.suntory.co.jp/sfnd/asteion/just-issued/magazine83_002.html#m83_01


ご専門の、女装史ではなく、同性愛をメインにした論文。
仕事の領域広げているなあ。
西洋的、固定化された同性愛関係でなく、若いころは「若衆」として、男色の相手をし、大人になると、若衆や女性と性行動を持つ日本の伝統の指摘が興味深い。
流動的かつ時間軸もあり、ということだろう。
また女装と男色のつながりも、ジェンダーオリエンテーションを分離してとらえる西洋的視点とは異なり興味深い。
女性同性愛も少し触れていた。未発表の女性同性愛論文があるようなので早く全貌を読みたい。
あと、トランスジェンダーを「性別を動かす人」と書いていた。新しい定義の試みか?



郊外の多文化主義 ― 「同胞」とは誰か
谷口功一
http://www.suntory.co.jp/sfnd/asteion/just-issued/magazine83_002.html#m83_02
おっ、谷口先生だ。
三橋さんと東さんに挟まれている並びは興味深い。
日系ブラジル人など、日本にも増えつつある移民の話。
日系ブラジル人などが多数働く工場のある地方都市は、観光客は行くことも少なく、谷口先生がタクシーに乗ると「本社の方ですか」と聞かれるという。
でもこの話、谷口先生が、本社風の雰囲気がある人だから、という気がする。
私も学会や講演などで、地方都市に行くことがあるが、「本社の人」に間違われたことはない。
芸人、テレビ局の人、寿司職人、電気工事の人、テニス関係者に間違われたことはある。


移民に反対し、反イスラムのオランダのビム・フォルタインの主張は考えさせられる。
>彼は「自らが同性愛者であることを公言し、女性解放や同性愛者への差別撤廃を成し遂げた六〇年代以降の社会運動を高く評価する」が、その上で、「女性や同性愛者に対して差別的なイスラムを厳しく批判する」


排除と包摂のせめぎあい ― LGBTをめぐる近年の動向
東優子
http://www.suntory.co.jp/sfnd/asteion/just-issued/magazine83_002.html#m83_03
相変わらず、海外と日本の動きを俯瞰的によく見ている。
頭も整理される。
ただ、注釈なく「トランス女性」という言葉を使っているが、一般読者は意味が分からないのでは。


「ハーフ」という幻想
サンドラ・ヘフェリン
http://www.suntory.co.jp/sfnd/asteion/just-issued/magazine83_002.html#m83_05
「ハーフは美男美女」「英語ができる」といったステレオタイプの指摘が面白かった。
LGBTは感性が鋭い」と同じだな。

アステイオン83

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