同性婚、道開く一歩 渋谷区で条例成立

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朝日
同性婚、道開く一歩 渋谷区で条例成立
 全国初の制度として東京都渋谷区で導入が決まった同性カップルの「パートナーシップ証明書」。この1枚がもつ効果と影響力とは。▼1面参照


 ■証明書の影響力は? 社会の意識、変化期待

 31日、渋谷区議会の傍聴席。レズビアンカップルの東小雪さん(30)と増原裕子さん(37)が条例成立を見守った。区内で同居する。東さんは「証明書をとったらコピーして常に携帯します。お互いの身に何かあった時に『区が認める関係です』って言えるから。できれば生命保険にも入りたい」。

 「パートナーシップ証明書」で可能になるのは、家族向け区営住宅への入居だ。従来は親族や事実婚など住民票に関係が記載されている人に限られていたが、証明書を持つ同性カップルにも広がる。だが、民間の賃貸住宅の場合、業者から「同性カップルはダメ」と断られると入居は難しい。区は事業者名を「公表」できるが、区は「あくまでも最終手段」とする。

 同性結婚式などの事業をするLetibee社(東京都新宿区)の林康紀共同代表は「実効性より社会的インパクトに意味がある」と語る。東京都世田谷区のレズビアン支援団体のスタッフも「条例ができることが報道された後、多くの性的少数者から『行政に訴えても無駄だとあきらめていた。希望が湧いた』という声が寄せられている」。

 海外で同性婚が認められた経緯に詳しい早稲田大の棚村政行教授(家族法)によると、欧米を中心にまず、同性カップルにも夫婦と同等の権利を法的に認める「パートナーシップ制度」が広がった後、同性婚が認められた。現在、パートナーシップ制度を導入する国は20カ国以上、同性婚を認める国は15カ国以上にのぼる。「渋谷区の条例は、国際社会がたどった歩みをようやく日本がとり始めたという意味で意義が大きい」と語る。

 明治大法科大学院辻村みよ子教授(憲法)は「渋谷の条例は、多様性を尊重する目的で制定され、ただちに同性婚を認めるものではない。性的少数者の人権の保障は、本来は法律で定めることが望ましい」と指摘する。(原田朱美、杉原里美)


 ■国政にも波及する? 保守系議員に警戒感

 渋谷区の動きは国政にも波及しつつある。

 自民党馳浩・元文部科学副大臣らは3月、超党派の「LGBT(性的少数者)に関する課題を考える議員連盟」を発足させた。民主党も党内にワーキングチームをつくり、性的少数者に対する差別解消法案などの検討を始めた。

 だが、保守系議員は同性婚など「家族の形」を変える議論につながることに警戒感を抱く。菅義偉官房長官は3月31日の記者会見で、条例について「家族のあり方に関わるのでコメントを控える」と述べた。文部科学省がまとめた性的少数者の児童・生徒への支援策も、3月末の公表予定が先送りになった。ある自民党文教族議員は「条例成立と時期が重なり、同性パートナーシップや同性婚と絡めて報じられないようにするため」と語る。

 性的少数者に対する差別意識も根強く残る。3月25日に非公開で開かれた自民党の「家族の絆を守る特命委員会」では、複数の議員から「同性愛は公序良俗に反する」「証明書があっても(同性愛を)嫌だと言う権利もある」などの発言があったという。

 (二階堂友紀)