状況性の性的欲求低下障害はおかしな概念

DSM-5では、女性の性的欲求低下障害は、「女性は性欲は最初はなくてもやってるうちに興奮することもあるよね」ということで、疾患ではなくなり、かわりに興奮障害と統一され、「性的関心・興奮の障害」となった。
いっぽう、男性では性的欲求低下障害はそのまま残された。
男性では、最初から性欲がなければいけない、ということなのだろう。
このことにも疑問は残るが、それはひとまずおいておいて。


状況性の性欲低下障害とはよく考えるとおかしな概念。
「状況性」とは性機能不全の下位分類で、「全般性」「状況性」というのがある。
全般性は、いつでもどこでも、で、状況性はある状況で、ということ。
勃起障害や、射精障害の場合は、性的欲求はあるにもかかわらず、ある状況では出来ないならば「状況性」という診断は理解できる。
でも性的欲求低下障害の場合「状況性」というのはよく考えるとおかしい。


性的欲求とはそもそも、一定の状況下で起きる。
そういう雰囲気とか、魅力的相手がそこにいるとか、邪魔が入らないとか。
年がら年中やりたいわけではない。
だから「状況性」に性欲が起きないのは当然のことであり、病気ではないはずだ。


臨床的には、たとえば愛人とは性欲があるが、配偶者には性欲がなければ、「状況性の性欲低下障害」などと診断されるのだろう。
でも、配偶者に性欲がないといけない、というのは倫理的判断基準であり、医学的正常の基準とは違うはずである。
やりたくない相手にやりたくないというのは、疾患とはみなせないと思う