第107回医師国家試験に、同性愛とHIVを結びつける問題が出題

「坂の上の Blues」さんのblogを読んでいたら、
「同性愛とHIV / AIDSを短絡的に線で結ぶ国の課題 」という記事があった。
http://blog.goo.ne.jp/kuukuublues/d/20130502


もとネタはたぶんこちらの記事のコメント。
http://nakaikeiji.jp/archives/51997976.html
>1. うなぎ犬2013年03月20日 02:30
107回に合格した新卒生です。
今年は削除問題は少なかったようですが、本番では首をかしげたくなるような問題も多かったです。
例えば
D18 病歴と疾患の組み合わせで正しいのはどれか。2つ選べ。
a 同性愛- ニューモシスチス肺炎
b 温泉旅行- クラミジア肺炎
c 鳥類の飼育- マイコプラズマ肺炎
d アルコール依存- レジオネラ肺炎
e 産褥期の猫との接触- Q熱
厚労省発表の答えはaとeで、
選択肢aの同性愛-ニューモシスチス肺炎って背景にHIV感染、AIDSがあるってことですよね。たぶん。
確かにHIV患者の7割は男性同性間の性的接触厚労省エイズ動向班より報告されており、データをもとに出題としたのかもしれませんが。
しかしながらこの選択肢aはすごく問題というか、大きな誤解を招く選択肢だと思いました。
臨床問題で同性愛のエピソード、病歴、症候などの記載があり、AIDS→ニューモシスチス肺炎を類推させるような、実際の症例をもとにした出題なら全く問題ないと思うのですが、107D18のように同性愛=HIVとまるで対応付けするような出題では、同性愛者に対する偏見や、異性間でのHIV感染を軽視するメッセージにならないだろうかと思うのです。女性をみたら妊娠を疑えとはちょっとレベルが違う話だと思うんですよね。そもそも妊娠自体は生理的なものですし。
医師国家試験は厚労省管轄であり、つまりこの選択肢は、厚労省の公式見解と考えることができますよね。
なんというか、臨床現場で思考しなければならない内容であることであったとしても、それを医師国家試験で出題していいかどうかはまた別だと思うのです。
たかだか医師国家試験でここまで考える必要はないかもしれませんが、女性を見たら妊娠を疑えのごとく同性愛者をみたらAIDSを疑えというあまりに短絡的な思考回路の研修医が4月から量産されることが日本の医療にとって健全であるとも思えないんですよね。
ちなみに私もae選びましたが



調べてみたら、過去にも同性愛とHIVを結びつける問題があった。
http://komei.ishikokkashiken.com/article/302153756.html
(第105回医師国家試験D-32より)
42歳の男性。同性愛者。
全身倦怠感、体重減少および皮疹を主訴に来院。
口腔内、体幹に皮疹が見られる。
最も考えられるのは?


105回のほうは、画像がメインで、追加情報として、同性愛者なので、まあそんなに問題ないと思うが。
107回の方は、あまりに短絡的。
倫理的にも問題だが、医学的にも不正確だと思う。
「同性愛」といっても、女性同性愛者もいるし、プラトニックな同性愛者もいる。
どうしてもHIVに結び付けたいなら、「男性間性交渉者」(MSM)あたりを使うべきかと。


いずれにせよ、「ふ」といえば「むべやまかぜ」じゃあるまいし、思考停止的組み合わせ問題を出す出題者の顔を見てみたいものだ。