体罰

人生で人に殴られた経験はほとんどないが。
小さい頃、学校の先生に3発ビンタされたことがある。


朝の自習時間。先生はまだ来てなくて。
男子数人がなにやら騒いでいた。
私は、騒ぐ習慣はなかったので、図書室で借りたシートン動物記かなにか、本を静かに読んでいた。


そこに先生がガラッとドアをあけて入ってきた。
「今、自習時間なのにさわいでいたでしょう」
と先生は怒った。
「騒いでいたのは誰ですか」
誰も名乗りを上げない。
「騒いでいたのは、男子でしょう。男子は全員後ろに立ちなさい」
騒いでいたのは、一部の男子であって、私はぜんぜん騒いでいないのだが???


「自習時間には騒いではいけません」
と、いいながら、後ろに立たせた、男子を全員、ひとりずつビンタをし始めた。
え、なんで、俺がビンタされるのか。


ビンタされたほかの男子はみな、泣いたり、謝ったりしていた。
私は、ビンタされたあとも、先生の行動がさっぱり理解できず、この人はいったい何を考えているのだろうかと先生の一挙一動を凝視観察していた。


「ほかの男子は反省したようだけど、アンノ君は反省してませんね」
と、私だけ2発目のビンタを食らった。
反省も何も、自習時間に、静かに本を読んでいただけなのだが。
私はますます状況が理解困難となり、先生を凝視した。


「まだ反省してませんね」
ばしっ!
3発目が飛んできた。


気が済んだのか、結局それで終わりとなった。


その後、子どもながらに、ことの推移を反芻・分析し、


・「騒ぐのは男子」という先入観が存在すること。
・教師、大人であっても、事実に基づいた合理的判断ではなく、先入観に基づく非合理的判断をすること。
・支配服従関係において、非服従的態度は、更なる怒りを生むこと。
・自分に非がなくても、反省的態度をとれば、暴力被害を回避できること。


などを考察した。


今から思い返せば、書物だけでは学べない、生身の人間存在・人間心理の不可解・複雑さを教えてくれた体験だったと思い、感謝している。
それに、右の頬、左の頬、右の頬と3発殴られた自分は、両頬殴られることを推奨したキリストを超えることも出来たし。