【萬物相】性転換者の性別

2011.9.12.朝鮮日報
http://www.chosunonline.com/news/20110912000000
【萬物相】性転換者の性別
 20世紀初め、デンマークの風景画家エイナールは、人物画家ゲルダ・ゴットライプと結婚した。ある日、妻の女性モデルが約束の日時に現れなかったため、夫が女装してモデル役を務めた。その後、夫は女性として暮らす方が楽だと考えたのか、妻の勧めで1930年にドイツへ行き、世界で初めて性転換手術を受けた。名前も「リリー・エルベ」に変更し、妻との事実婚を認めるよう求めたが、デンマーク国王は結婚を無効とした。


 それから100年もたたないうちに、あらゆる法治国家で、性転換者(トランスジェンダー)の人権が保護・尊重されるようになった。韓国のトランスジェンダーの歌手ハリスは2002年、裁判所で戸籍上の性別の変更を認められ、07年に結婚した。韓国の裁判所は1996年まで、男性から女性への性転換手術を受けた人について「『婦女』とは考えられないため、強姦(ごうかん)罪は成立しない」との判断を示していた。だが、釜山地裁は2009年、男性から女性への性転換手術を受けた人物に性的暴行を加えた男に対し、懲役3年の判決を下した。


 日本の作家よしもとばななの小説『キッチン』には、女性への性転換手術をした妻帯者の男性が登場する。彼は妻と別れた後、再婚せずに一人で子どもを育てた。このような男性が、性別を女性に変更するよう求めて提訴した場合、裁判所はどんな判決を下すだろうか。日本の裁判所は、子どもが未成年者の場合は性別の変更を許容していない一方、成人した後なら変更を許容している。


 9月2日、韓国の大法院(日本の最高裁判所に相当)でもこれと同様の判決が下った。男性として生まれ、性転換手術を受けたAさんが、家族関係登録簿の性別を女性に変更するよう求めた。Aさんは生物学的な性と心理的な性が食い違う「性同一性障害」を抱えたまま結婚し、子どもももうけたが、離婚後に性転換手術を受け、16歳の息子を一人で育てている。大法院は「未成年の子どもに対し、精神的なショックや混乱をもたらすなど、否定的な影響を与え得る」として、Aさんの性別の変更を認めなかったが、子どもが成人した後は性別の変更が可能だ、と付け加えた。


 大法院はこのほか、婚姻中の性転換者の性別の変更も認めないとの判断を示した。これは同性の結婚を認めていないためだ。米国のテキサス州など四つの州では、公式な記録の上での性別の変更を認めていない。またイギリスでは、婚姻中に性別を変更した場合、自動的に離婚となる。スウェーデンオーストリア、オランダでも、婚姻中には性別の変更が認められていない。法は性転換者の人権を尊重している一方、男女の結婚や子どもの養育という慣習も保護すべきものだと判断している。

朴海鉉(パク・ヘヒョン)論説委員

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