「純粋な性同一性障害」とは何かも難しい

とはいうものの「純粋な性同一性障害」とは何かも難しい。


たとえば、
「強固なidentity+強い性別違和」+「他の精神疾患がないこと」を条件だとする。


まず、強固なidentityだが、「誰がなんと言おうと、私の心は女性だ(男性だ)」と言い切る人は珍しい。多くは、「そう思うんですけど・・・」という感じか。
性別違和そのものは、はっきりしていることは多いが、それを行動面で表す社会的な性役割移行だとか、身体治療希望となると、はっきりしないことも多い。社会や家族や職場の理解状況とか、金銭面だとか、身体治療への不安の程度など、もろもろを勘案して、望みの性別で暮らそうとか、治療を受けようとか決意することになる。


他の精神疾患の有無も難しい。
抑うつ状態は、よくある症状だが、性別違和に伴う二次的なものか、もともと、うつ傾向がある人なのか区別は難しい。
はっきりした統合失調症ではなくても、独特な思考パターンをする人なんかもいて悩ましい。
PDDに関しても、アスペっぽいひとは、よくある話で、悩ましい。
IQ60は、除外診断だとしても、じゃあ、70〜80あたりだと、どうなるんだ、という話で。
パーソナリティー障害の合併なんかもよくある話で。


というわけで、臨床の現場に「純粋な性同一性障害」なるものは、あまり、お見かけしない。
さらに、どこからどこが性同一性障害かの線引きも難しい。
「まあ、いろいろあるがどうしたものか」と悩みながら時が流れていくのが現実である。