セクシュアルマイノリティー:「性の揺らぎ」打ち明け 市民団体が青森で講座 /青森

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セクシュアルマイノリティー:「性の揺らぎ」打ち明け 市民団体が青森で講座 /青森
 私は男ですか女ですか−−。どちらにも当てはまらない、あるいは表しきれない性がある。青森市で今月中旬に開かれた講座で、普段は自分の性の在り方を明かしていないセクシュアルマイノリティー3人が「性の揺らぎ」を初めて打ち明けた。主催した弘前市の市民団体「スクランブルエッグ」(柳田創代表)は「性には多様性があり、一人一人を定義できない。多くの人に身近な存在として知ってほしい」と話している。【矢澤秀範】

 「自分が何者かというのを自分でも決めきれない」。短髪でカジュアルな男性服を着こなす県南地方の柊(しゅう)さん(31)=仮名=は、揺れる心を大勢の前で初めて打ち明けた。

 戸籍上は女性。小さいころから男の子に交じって遊ぶのが好きで、「自分は男になる」と思っていた。親から「女の子なんだから女らしく」と言われると、反発を覚えた。

 しゃべらなければ、今はほとんどの人が外見から男性として見てくれる。遠慮なく男子トイレに入る。日常生活で表面上の生きづらさはない。

 自分をバイセクシュアル「的」だとみているが「男にも女にもなりきれない」と「揺らぎ」を感じる時もある。アンケートなどに答える時、性別の選択肢は「男」と「女」しかない。冒頭にあると、「どっちだべ?」と丸をつけられず、その後の設問に進めなくなる。

 普段は言葉ではなく、スタイルで自分自身を表現しているので、あえて周囲に打ち明けていない。「見た目から入ってもらって、お互いに深く知り合っていければいい」

 盛岡市のつちこさん(27)=仮名=は、かつて勤務していた学習塾で、生徒の席順を便宜的に「男女」で分けた時の葛藤(かっとう)を語った。「自分みたいに悩んでいる子もいるんだろうな」。胸が張り裂けそうになった。

 小さいころから女性であることに違和感があった。好きになるのは女性ばかり。友情が壊れる恐れがあるため、今はレズビアン以外の女性に恋しないようにしている。

 岩手県内にセクシュアルマイノリティーの活動団体がないというつちこさん。「こうした感覚がない人には未知なることかもしれないけど、少しでも共感してくれればいい」と、揺らぐ心を打ち明けた理由を話す。

 一方、自分の性を打ち明けることによるリスクもある。「青森セクシュアルマイノリティ協会 にじいろ扁平(へんぺい)足」代表のななさん(32)=仮名=は、レズビアンであることを打ち明けたことで、介護の職場を追われた。「女性の面倒を見せられない」というのが理由だった。ななさんは「経済的な問題にもつながり、うつや自殺につながる人も多い」と指摘する。

 講座はセクシュアルマイノリティーの生きづらさ解消に向けた活動をしている「スクランブルエッグ」が、多様な性を多くの人に知ってもらい、身近な存在として理解を深めてもらうことを目的に開催した。柳田代表は「多様な性は感覚として感じるしかないが、近い存在として知ってほしい」と話している。

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 ■ことば

 ◇セクシュアルマイノリティ
 性的少数者。身体上の性的特徴や性別の自己認識、性的指向などが典型的な男女と異なる人たちの総称。▽性同一性障害者(トランスジェンダー)▽同性愛者(ゲイ・レズビアン)▽両性愛者(バイセクシュアル)−−などがある。人口の3〜5%に存在するとされる。

毎日新聞 2010年11月18日 地方版