性同一性障害:患者に化粧講習 岡山大病院と資生堂が提携

性同一性障害:患者に化粧講習 岡山大病院と資生堂が提携 /岡山

 男性として生まれたが、心は女性の患者にメーク講習を―。性同一性障害性別適合手術を実施している岡山大病院が、化粧品大手の資生堂と提携し、こんな取り組みを進めている。岡山大によると、大学病院が民間企業と協力し、性同一性障害者の支援をするのは全国初。「生活の質を高められるように」との狙いだ。
 講習は月に1度で、岡山大病院を受診している数人が参加。講師の手の動きをまねながら「夏の疲れたお肌回復ケア・秋メーク」など毎回テーマを変えて実施される。参加者は「鏡を見るのが楽しくなった」と満足げだ。
 「講師が基礎から丁寧に教え、うまくない点を指摘されるのは意義深い」と話すのは、広島県から参加した販売業の男性(32)。約5年前からホルモン治療を始め、性別適合手術は受けていないが外見は“女性”。行きつけの化粧品店で「店員は気を使って本音を言ってくれないのでは」と心配だったという。
 性同一性障害では、国内で性別適合手術ができる病院は少なく、費用も高額。手術代が安いタイなど海外で手術を受ける患者が多いとされる。岡山大でこれまで千人以上が性同一性障害と診断されたが性器再建手術まで受けたのは約50人。女性から男性への手術では乳房切除、子宮摘出、尿道延長、陰茎形成という手順を踏み、総額で約300万円。男性から女性の場合も約130万円かかる。難波祐三郎准教授(形成外科)は「化粧講習など生活支援を充実させて海外との違いをアピールしたい」。
 10月からは下着の選び方などを学ぶファッション講習もスタート。「声を高くする手術はリスクがある。女性らしい話し方を学びたい」との要望も多く、ボイストレーニングも始める方針だ。難波准教授は「当事者が安心できる取り組みを今後も続けたい」と話している。

[毎日新聞社 2010年10月18日(月)]