【ニューハーフ偽装結婚事件】“男性”証明に海外でDNA鑑定 埼玉県警

サンケイ埼玉2010.5.8
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【ニューハーフ偽装結婚事件】“男性”証明に海外でDNA鑑定 埼玉県警 (1/2ページ)
2010.5.8 12:37
 不法滞在のフィリピン人ニューハーフ(バクラ)が日本人の男と偽装結婚していた事件で、埼玉県警はついに首謀者の逮捕状を取った。ただ、今回の犯行に使われた旅券が偽造であることを証明するに当たって、県警は予想以上に高いハードルを越えなければいけなかった。

 事件に使われた旅券の元になったのは、群馬県太田市の元消防士の男とフィリピンで偽装結婚した現地女性名義のものだった。

 男の交際相手のバクラはこの旅券を流用、女になりすまして日本で外国人登録証明書を偽造、男との婚姻届も役所に提出していた。

 この事件では、偽装結婚であることの最大の立証は妻の性別が男であることを証明することだが、県警ではそこで大きな“壁”にぶつかった。

 まず、バクラは「見た目は全くの女性。パッと見ただけで男性とは見抜けない」(捜査関係者)という。

 さらに、このバクラは性転換手術も受けていたため、レントゲン検査などをしても男性という結果を得られなかった。

 県警では県内の医師に相談したところ、DNA鑑定しかないという結論にたどり着いた。ところが、県警科学捜査研究所(科捜研)では、警察庁の指針(平成15年改正)によって、DNA鑑定を男女の証明に用いることができないのだ。
 指針では、DNA鑑定は「被疑者の特定などを目的とし、原則、現場に残された物証と比較するために実施する」と規定されており、「遺伝病など性質の把握を目的として実施するものではない」と明記されている。つまり、性別検査を目的とした鑑定は指針に抵触する。

 また、科捜研のDNA鑑定では性染色体の遺伝子型も調べるが、「XY型の結果が得られても、男性であることの目安にはなるが証拠にならない」(科捜研)ため、性別の特定には使えないという。 

 県警は国内での性別検査を断念。海外の研究機関に精密な鑑定を依頼し、男性であるとの結論を得たという。性別検査という予想外の壁を乗り越えた県警は、首謀者の国際刑事警察機構(ICPO)を通じた国際手配を視野に、今後も事件の全容解明を目指す。